女装と復讐は街の華

女装と復讐 -発起編-

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僕はアンナさんから渡された着替えを鏡の前の椅子に置き、一つ一つ確認した。

まずは…黒のワンピース。秋良さんの言っていたとおり、色こそ違えど先週のワンピースとデザインは一緒。そして…これがその上に羽織る、へそ丈のショートコート。


『その純白のラビットファーのモコモココート。凄く綺麗だし、触り心地も良くて可愛いわね』

『…ほんとですね。触り心地が…気持ちいい』


デザインもいい。コートを撫でると手のひらが滑なめらかにするりと滑すべる。


『そのコート、縫製したのは啓介くんだけど、フランス直輸入の高級天然厳選毛皮だから…市場価格で言うなら…23万円ぐらいのショートコートかなって言ってたわ』

『こ…これ、に…23万円ですか！！？』


たっ高い…予想価格に驚き…。
それに…これは僕の採寸から作られた、いわゆる世界で一つだけの《オーダーメイド》なんだよな…凄っ。

僕の…金魚の着る衣服は全て特別製。本当に秋良さんと啓介さんには、お礼を言い尽くしてもまだ言い足りないくらい。


『でね…詩織が《私が着てもぴったりなんだから、これ金魚が着たあとで貰っちゃおうかなー？》って。うふふ』


…いやいや。そんなこと言われても…っていうか詩織、僕より先に試着したんだ…。
さすが詩織…抜け目がない…。






僕は用意されていたベージュのキラキラストッキングを穿いて…この黒のワンピースを着て…膝丈の茶色い本革ニーハイブーツを履いて…着替え終了。そして椅子に座った。

アンナさんが僕の左耳のピアスのことに触れ、ふと髪を触りながら言う。


『信吾くん…そろそろ髪が長くなってきたわね。丁度いいから、ついでにカットも一緒にどうかしら？』


僕は座ったまま、振り向いてアンナさんを見た。


『いえ…そのままで。僕、もう少し髪を長くしてみようかな…と』

『あら？なぜ？』


改めて僕は正面の鏡を見た。


『…ここはアンナさんの《美容院》です。なのに…いつまでも偽物ウィッグってのも』

『そんなの…気にしなくてもいいのに』


僕は黙って、鏡に映るアンナさんと目線を合わせた。アンナさんは仕方なさそうに頷いた。


『じゃ…もし、女の子みたいな髪の長さになったとして…大学はいいの？』

『わざと寝癖髪みたいなするとか、ニット帽を被ってなんとか隠し通すとか、後ろ髪を束ねてそれっぽく見せるとか…とにかく、なんとか毎日誤魔化します』


鏡の中のアンナさんは、目を閉じ…何かを考えてる様子。


『…それで、本当に大丈夫？』

『はい。大丈夫です』





さすがに性別や身長とかは生まれ持ったもの…変えられない。けど衣服や装飾品のファッションセンスとか、髪の長さとか…変えられるものはなるべく、本物の自分で…瀬ヶ池の女の子たちに挑みたいんだ。