女装と復讐は街の華

女装と復讐 -発起編-

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アンナさんは右掌を左肘に当て、左手の人差し指で左目の横…つまり顔の左辺という部分…をトントンと軽く叩きながら、目を閉じて黙って何かを考えている様子…。


『…アンナさん？』

『ごめんなさい。今…黙って考え事をしてたの』


そして、ゆっくりと目を開け…真っ直ぐに僕を見た。


『じゃあ、今度は私からあなたに質問で返すけど…あなたは裏も表も《瀬ヶ池の全て》を解ってて言ってるの…？』

『…瀬ヶ池の全て？…裏？表？』


アンナさんの表情が、少し険しく変化した。


『じゃあ、あなたは…なぜ瀬ヶ池には綺麗だったり、可愛かったり…そんなお洒落な女の子しかいない…って思う？解る？』

『…えっ……いえ。解りません』


…そういえば確かに…瀬ヶ池には、本当にレベルの高いお洒落な女の子たちしかいなかった気がする…でもなんで？


『叩き出されるからよ。瀬ヶ池の街から』


……叩き出される！？


『瀬ヶ池には相応ふさわしくない女の子たち…つまりお洒落じゃなかったり、綺麗でも可愛いわけでもない女の子たち…は、あなたのように陰で笑われたり、指を差されたり…って、陰険な方法でチクチクチクチク…街から排除されてるの…』


…排除。
なんだか、思ってたより辛辣しんらつな話になってきた…。


『あ、でも…早瀬ヶ池って街は、誰でもそこに来た女の子たち全員を、凄くお洒落に変身させてくれる街だって』

『《誰でも》とか《全員》だなんて、そんなのは過去の話よ。今の瀬ヶ池は違う』


《僕が想像していた早瀬ヶ池という街》を、アンナさんに完全否定された…。


『話を戻すけど…その中でも、最も悪質なのはネットの《書き込みサイト》やTwitterなどの《SNS》での情報発信よ』


…なるほど。掲示板でのいじめみたいなものか…よくある話だ。


『つまりは…この街に相応しくないと結論づけられた、女の子本人の写真や情報がネット上に載せられて…？』

『そう。多分ね』


僕は、それを聞いてハッとした！


『じゃあ…まさか！？《瀬ヶ池のメダカ》って僕のあだ名も…ネットで！？』

『それは…そうとは断言できないわ。だって実際に、堂々とナンパして目立ってたんだもの。見た目もアレだし、本当に目障りで、それが女の子たちの噂話で、ただ広がっただけかも…』


………あぁ…そうですか…。


『流出し拡散していくネット情報と伴って、もう一つ怖いのは《女の子たちの団結力》』


……女の子たちの団結力？


『あなたは、不特定多数の瀬ヶ池の女の子たちに《仕返しや復讐をしたい！》って…発案よね？』


僕は少し戸惑いながら…頷いた。


『あなたの女子メイクや女装が、いかに誰よりも可愛くても、その正体が《瀬ヶ池のメダカ》で、更に《女の子たちへの復讐のためだった》なんてバレてしまったら…それはそれは、団結した瀬ヶ池の女の子たちの《報復措置》の怖さといったらないわよ。本当に…』


…ゴクリ。