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第二章

55ーガンバ

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 さ、鍛練場に着きました。ジュード兄様が入口を開けてくれます。紳士だわ。

 ――ガン! ガキーン!!

 剣を合わせる音が響きます。

「あー! クソ! 全然敵わねー!」
「ハッハッハーッ! レオン、そう簡単に勝てると思うなよ!」

 ラウ兄様が双剣を手首だけでクルクル回しながらドヤッてます。

「ラウ兄様、レオン様」
「ルル、どうした? 兄様のカッコいいところを見に来たのか? それとも、レオンのヘタレなところか?」
「ラウアース、ヒデーよ」
「ピアの腕輪が出来たのよ。ピアがレオン様に見せたいって」
「そうか、ピア見せてくれ」
「ピー!」

 ピアが左腕を出して自慢気に腕輪を見せます。

「おー! カッコいいじゃないか!」
「ピア、よく似合ってるよ」

 レオン様とラウ兄様に褒められて、嬉しそうです。

「ピッピー、ピピュー、ピー!」

 何か喋りながらフワフワと飛んでるわ。

「ハハハ、カッコいい、カッコいい!」

 周りにいた隊員達まで
 ――ピア! 似合ってるぞ!
 ――カッコいいなー!
 とか、言ってます。どんどん、ピアは自慢気に飛び周ります。そして、お決まりの位置。レオン様の頭に乗りました。

「頭かよ!」
「ピー!」

 なんか親子みたいね。

「レオン殿下は双剣を使われるのですか?」

 急にマーリソン様がレオン様に聞きました。

「あーいや、まだ鍛練中なんだ」
「ほぅ、双剣ですか。お手合わせ願いますか?」
「え!? マーリソン殿、剣使えるのか?」
「まあ、ショートソードと双剣なら少々齧った事があります」
「いいじゃないか! レオン、手合わせしてみろよ」
「えー、いくらなんでも……」
「ま、ま、そう仰らず。剣をお貸し頂けますか?」
「ああ、俺のを使えばいい」
「ラウアース様、有難うございます」

 マーリソン様、確かめる様に2~3度剣を振ってみている。

「では、いいかな? レオン」
「おう、いいぞ!」
「宜しくお願い致します」

 予想外の展開に周りで見ていた隊員達が湧き上がる。

「よし、はじめ!!」
 ――ガキーン!………………。

「そこまで!!」
「なんでだーー!!」
「ハッハッハ! いやぁ、久しぶりでも身体は覚えているものですね」

 なんと、マーリソン様が勝ってしまいました。

「マーリソン様、剣も使えるのですね」
「家を出る為に色々試していた時に、冒険者も視野に入れていたので少し齧った程度なのですよ。私は基本、魔法が好きですからね」

 なるほど……本当にオールラウンダーだわ。

「マーリソン殿、強いな!」
「なかなかやるじゃないか、驚いたよ!」

 ラウ兄様とジュード兄様も褒めてます。レオン様……

「ルル、慰めて!」
「んー、ガンバ?」
「くそー!!」
「皆さん、いつまでやってるんですか? もうお昼ですよ」

 ノトスが呼びに来ました。

「ジュード様、出迎えに行かなければならないのに。早く昼食食べてしまって下さい」
「あ、悪い」

 皆で、食堂です。

「モモ、ルビごめんね、ユリウスに連れてきてもらったの?」
「そうよ。ルル遅いから」
「お腹すいたのー」
「ごめんね、食べましょう」
「レオン、どうした?」

 お父様が、しょんぼりしているレオン様に声を掛けてしまいました。

「父上、ソッとしておいてあげて下さい」
「ラウ、そんなにお前にかなわなかったのか?」
「いえ、それは仕方ありません。まだ始めたばかりですら」
「じゃあ、どうした?」
「あの、実はお父様」
「ルルに負けたか? それも仕方ないだろ?」
「違うんです、お父様。マーリソン様に負けたんです」
「何? マーリソン殿にか?」
「はい。父上。マーリソン殿、なかなかのもんです」
「そうなのか!?」

 どんどん凹んでいくわ、レオン様。

「ピー」
「なんだ? 水か?」
「ピー。ングングング、プハーッ!」

 ピアは平和だわ。マイペースね。

「では、父上。行って参ります」
「ああ、ジュード。頼んだ」

 ジュード兄様がノトスとセイバー10人を連れて、マールス侯爵を出迎えに向かいました。マジックバッグに食糧やら何やら色々入れて。

「ジュノー嬢、ジュードに会いに来たんだろうな」
「レオン様、そう思いますか?」
「ああ。例の乙女ゲームな、ルルが第2王子の婚約者になってるからジュノー嬢は今とは違う立ち位置なわけだ」
「なるほど。で?」
「ゲームだと、ジュノー嬢はジュードの婚約者なんだよ」
「そうなの!? 何今頃そんな大事な事言ってるんですか!?」
「だって、乙ゲーとは色々違うと言ってただろ? だから、ジュードとも関係ないのかと思ってたんだよ。でもジュードの歳で婚約者がいないのって不思議だったんだ。ジュードいい奴だし、イケメンだし。実際、令嬢方から人気あるじゃん?」
「でもこの流れは、ジュノー様と……」
「だろ? そう思うだろ?」
「んー……とにかく。最近レオン様のカッコいいところがない事は理解しました」
「ルル! 酷い!」
「……ガンバ」
「レオン殿下、ルル。二人にお話があるのでサロンまで」
「はい、お母様」

 なんだろ、改まって。思わずレオン様と顔を見合わせました。

「他でもないのです。レオン殿下、帝国の父上から連絡がありました」
「宰相殿からですか?」
「ええ」
「何でしょうか?」
「いつまでも、ダラダラと滞在していないで、そろそろハッキリと陛下に報告して進めて下さい。だそうです」
「それは……」
「勿論、ルルとの婚約ですわね」
「それは……私は先日も言いましたが、勿論ルル嬢との婚姻を望んでおります」
「では、ルルは? 以前は軽く答えていたけど、本当に進めていいのね」

 えっと……改まって言われると……。

「え? ルル嫌なのか!?」
「そうじゃなくて……」
「ルルーシュア?」
「お母様、私は……」
「俺、そんなダメか?」
「殿下、焦らせてはいけません」
「申し訳ありません」
「レオン様、嫌なのではなくて……その……」
「構わないよ、思っている事を言ってくれないか?」
「レオン様、お母様。私で良いのでしょうか?」

 レオン様は、話していて楽しいけど皇子殿下だもの。気後れしちゃうと言うか……。

「ルル、それはどう言う意味かしら?」
「第2王子のパーティーの時に皇子殿下の正装をしたレオン様を見て思ったのです。私は……普通の令嬢ではないと思うのです。魔法で攻撃もしますし、剣で戦いもします。そんな私が帝国の皇子殿下となんて……」

 皇子殿下の隣に、私が立っていて良いのかと思ってしまったのよ。
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