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3話 婚約に向けて

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 ニーナが学園に入学して3年目となり… 数ヶ月後には卒業もひかえている。
 
 最近はリルベルやマーカスとニーナは3人でいることが多く… ケインはなにかと理由をつけて、ニーナとの約束をやぶるようになった。

 ケインが2人っきりになるのを、けているように感じたニーナは、不安を消しさろうと、思い切って婚約の話をすることにした。
 淑女しゅくじょなら、絶対に自分からプロポーズをしないのが、貴族の常識だが… ニーナの中で、常識をやぶる恥ずかしさよりも、ケインへの不安が大きかったからだ。

 

「それでニーナ、話ってなんだい?」

「あ… あのね、ケイン…? お父様がそろそろ私の婚約者を決めたがっているの! それで、あなたのことを、話しても良いかしら?」
 学園の裏庭にある、大きなかしの木の下で… ニーナはもじもじとケインにたずねた。

「少し前に私も… 社交界にデビューしたでしょう? それでいくつか、婚約のお話が出ていてね……?」

「・・・・・・」
 ケインは眉間みけんに深いしわをよせた。

「だから、あなたも私のことを、ご両親と相談してくれる?」
 気のせいかしら? 一瞬、ケインが嫌そうな顔をしていたように見えた… 婚約はまだ早いと思っているのかしら?

「わかった、考えておくよ…」

「・・・・・・」
 考えておく? 婚約の話をしたら、ケインはもっと喜んでくれると思っていたのに?

「あのさ、ニーナ? 話はそれだけか?」
「ええ…」
「なら、僕は他に用があるから、悪いけどもう行くよ!」
「え?! 待ってケイン…」
「ごめん、急いでいるんだ! じゃあね!」

「ケイン……?」
 何日も考えて、勇気をふりしぼって、ケインに婚約の話をしたのよ…? なぜなのケイン?! なぜ、はっきりと“婚約しよう”と言ってくれないの?!

 1人取り残された、かしの木の下で… ニーナは混乱し、頭の中がケインへの疑問でいっぱいになり、破裂はれつしそうだった。

「やっぱりあなたは…っ!」
 私のことが“好きだ”と… 以前は毎日、言ってくれたのに…? 今はぜんぜん “好きだ”と言ってくれない… なぜなの?! もう、私のことが好きではないの?
 
 ケインとのことをニーナが、ふり返って考えてみると… ケインは“ニーナが好きだ” …とたくさん言ってくれたが、一度も”結婚して下さい” …とプロポーズをされたことが、無いことに気づいた。

 友人のリルベルやマーカスが、早く婚約しろと言っても… ケインは軽く受け流し、今も私たちは“秘密の恋人”を続けている。

「好きなのに… 結婚はしたくないなんてことが、あるの…?!」

 ニーナは婚約の話をケインにはぐらかされ… ドロドロとした不安の谷間に落ちこむ。





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