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12.公爵家にて……お茶会の出来事2

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 私達の緊迫した様子に気づかす、レオン令息が

「リーゼンフェルト令嬢やローマン令息が見えているので、僕もお茶会に参加しても良いかな?」

 まったく周りの様子に気づかす、のほほんと言うので、メイドの嫌がらせをやらせてるのがレオン令息かと疑ったぐらいだ。
 カミラ令嬢をみると、ほんの少し怯えた顔をした。ひごろから、カミラ令嬢に優しくしてないのだろうと検討がついたので、

「レオン令息、他家の8歳の私が言うのもなんですが、今日のお茶会は残念です。
 カミラ令嬢が私の好きなイチゴケーキやイチゴのお菓子を用意してくれたテーブルをみて、嬉しくなりました。
 でも公爵家のメイドの方達には残念で仕方がありません。私は、カミラ令嬢が好きです。公爵家では、楽しめないなら、我が家で楽しみたいと思ってます。

 レオン令息は知っていましたか?このメイド達がカミラ令嬢に意地悪をしているのを」

「ちょっと待ってくれ。リーゼンフェルト令嬢、いつもカミラがメイドに酷く怒ったりしている。突き飛ばしたりしたとも聞いている」

「じゃあ、逆に聞きます。何故、カミラ令嬢がメイドに怒ったり突き飛ばしたりする理由を聞いたことがありますか?」

「メイドがカミラにお茶を零したからというが、火傷もしていなし、一緒にお茶している誰も見ていないと言うから、カミラが言い訳をしているのだろう?」

 レオン令息の言葉で、カミラ令嬢が日頃から訴えても誰も信じず、助けてくれなかったことがわかる。カミラ令嬢をみると、静かにポロポロと涙を流していた。

 このまま、公爵家にカミラ令嬢を残して帰っては、カミラ令嬢が悪役令嬢になってしまう。

 「執事長、公爵様はいつ頃お帰りですか?」

「リーゼンフェルト令嬢、いきなり父上に何を言うつもりだ」

「いいですか、レオン令息、私は我が家ではない家に行くときは、常にメイドをみます。

 なぜなら貴族は直接仕掛けることはしませんが、メイドや使用人を使って、何かしてきますからね。

 だから、メイド達の立ち位置で死角になりやすい場所を理解しています。

 また、私はお茶が好きで入れ方の練習もしましたので、紅茶の渋みとか色や匂いでわかります。
 私にだけ、渋みが強い紅茶をだすなら、意地悪かと思いますが、ローマン令息やカミラ令嬢にも渋いお茶をだすので、このお茶会を失敗させたいのだと認識しました。

 上手くカミラ令嬢にお茶がこぼせなくて、お茶の不味さを指摘して、お茶会の雰囲気を壊させるつもりだったのでしょう。

 いつもカミラ令嬢が、怒ると言われましたよね、こんな事を毎回されれば、誰だって怒ります。

 今回の件で、このメイド達が解雇されても、元を改善しなければ何もなりません。
 ですから、私は公爵様にある提案をしようと思ってます」

 私の強い意志を感じたのか、レオン令息は目を見開いている。
 カミラ令嬢が私の手を握り、不安そうにしている。執事長は、

 今までのカミラ令嬢の出来事がメイドが悪いとはわかっていなかったので、ただただびっくりしている。

「旦那様なら、もうじきお帰りになられますが、リーゼンフェルト伯爵令嬢に会われるかどうかは、お約束出来ません」

「確かにその通りですね。公爵閣下は忙しい方ですから、では、もし時間がとれないなら、カミラ令嬢を伯爵家で過ごす許可を頂いて下さい。

 もし、会って下さるなら、相談したいことがあると伝えて下さい。

 せっかくケーキを用意していただいたので、私がお茶を入れます。新たな茶器とお湯の準備をして下さい。

 執事長、このメイド達を採用したのは誰か、場合によっては解雇になる前に真相を究明して下さい。
 解雇して終わりはダメです。命令を下した人が紹介状を書いてしまうといけませんから。

 くれぐれも注意して下さい。カミラ令嬢は、公爵令嬢です。あなた方が仕える方の一人だと忘れないことです」

 メイド達は顔色が悪く座り込んでいたので、侍従が茶器を運んできた。
 私はポットに茶葉とお湯を注ぎ、美味しいお茶をいれるために、蒸らした。
 茶器に紅茶を注ぐと、とても良い香りが広がった。さすがは公爵家、良い茶葉を使っている。

「レオン令息、ローマン令息のお茶を飲んでみて下さい。手をつけていません。冷めてしまってますが、美味しいお茶なら、冷めても美味しいですよ。

 執事長にも飲んでいただきました。私が話していることを聞いても大袈裟だと思うかもしれません。

 だから、一度飲んで見て下さい。カミラ令嬢に出されているお茶の不味さを知って下さい」

 私にここまで言われたレオン令息は、ルーカス君に出されていたお茶を飲んだ。飲んだ瞬間、レオン令息は吹き出した。

「なんだ、こんな渋みの紅茶は。こんなものを出していたのか」

「そうなりますよね、レオン令息も怒りますよね。カミラ令嬢が怒って当たり前なのです。素人の私が入れたお茶をどうぞ」

 素直に私の入れたお茶を飲みほした。

「レオン令息も執事長も、紅茶の味の不味さの証人です。私は、カミラ令嬢に故意にお茶をこぼしたのを見た証人です。
 だから公爵家でカミラ令嬢を悪く言うのをやめてください。カミラ令嬢は、何も悪くありません」

 きっぱり言い切るその場で、拍手がおこった。後ろを振り返ると木の陰からカミラ令嬢に似た人が出てきた。

  木の陰から、私達の会話を聞いていたのだろう。余りにも、お父様が言われる通りの眼力の強さに、ルーカス君が私の手を握り震えている。

「カミラのお茶会の様子を見ようと思ってきたのだが面白いことになっているね。君たちは誰かな?」

「こんにちは、公爵閣下。リーゼンフェルト伯爵の娘エミリーと申します。
 カミラ令嬢とのお茶会を楽しみにしてまいりました。でもお茶会よりも、閣下にお願いしたいことが出来ました。
 私の話を聞いていただけるお時間を作っていただけますか?」

 私と公爵閣下は、互いに睨みあうかのような、じっと見つめあった。

「面白い令嬢だな。いいだろ話を聞こう。カミラとのお茶会が終わったら、私の執務室においで」

 そう言い残すと執事長等に指示を出して歩いて行った。
 公爵閣下は、落ち着いてお茶会が楽しめるよう、テーブルから離れた場所に侍従を配置させ、レオン令息は勿論一緒に連れていき、メイド達と執事長も居なくなった。 
 
 私の手を握りしめていた二人は、お互いに顔を見合わせ、私の顔を見ると、そっと手を離して、元の席に座り、私が入れたお茶を飲んでひと息ついた。
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