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11.公爵家にて……お茶会の出来事1

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 カミラ令嬢とのお茶会の日、すぐ上のお兄様が、シュタイベルト公爵家に行くなら、レオン令息に本を渡しておいて欲しいと言われた。

 この国の貴族や裕福な平民の子供たちは、マイヤー学院で学ぶ。
 わかりやすく説明すると、日本の中高一貫校みたいな存在だ。誰でも平等に入れる。成績の良い者や、さらに勉強したい者は、マイヤー大学に行く。

 13歳から15歳が中等部、16歳から18歳高等部、成績に応じてスキップが可能だ。カミラ令嬢の兄は、13歳の中等部なのに、ケヴィンお兄様は16歳で高等部なので、カミラ令嬢の兄と接点があるのが不思議だった。

 私がじっと本を眺めるから、不思議に思ったのか、私を抱き上げて、

「我が家のお姫様は、何をそんなに考えてるの?お兄様に話してご覧」

「もう、お兄様ったら、ワザワザ抱き上げなくても。お兄様は高等部でしょ、それなのになぜ、カミラ令嬢のお兄様を知っているの?
 中等部だと接点がないと思うのです。この本はなあに?」

「ああ、レオンとは同じ乗馬倶楽部で一緒なんだよ。以前話した時に、この本が読みたいと言っていてね、今度貸すよと話して忘れてて。

 だが、もし必要なかったら、また持って帰ってきて。

 カミラ令嬢の事だけど、レオンの話だと妹なのに、性格が悪いと言っていたから、よっぽど我儘なんだと思うけど、エミリーは大丈夫?

 もし、嫌な事が、起こったらすぐに帰っておいでよ」

「ケヴィンお兄様、もし私が我儘でも、友達とかに性格が悪いと話しますか?」

「僕がエミリーの悪口を言う訳がないだろ。もし、我儘なら、意志が強いんだと言うよ」

「ケヴィンお兄様、普通ならそうですよね。
 多分ですが、カミラ令嬢は家族仲が微妙に悪く、公爵家で辛い立場なんだと思います。
 だから、私は、せっかく友達になったのですからカミラ令嬢の力になりたいのです」

 お兄様が神妙な顔で私の顔をみて、私を抱きしめた。

「エミリー、そうだな、兄が守るべき妹の悪口を言うんだから、さぞ家で居心地が悪いだろうな。
 エミリーは優しいな。本は渡せれたらで大丈夫だから、気をつけて行っておいで」

 そう言うと私が馬車に乗るまで見送ってくれた。

 今日は、カミラ令嬢の家族や、専属の使用人達の精霊の色を確認しよう。
 本当は、どの精霊かはっきり見分けれたほうがいいのだか、仕方がない。色だけだと、しっかりとした属性がわからないのが難点だ。

 しかし、神様が精霊のすべてが見えるのも、疲れるという配慮からなのだから、受け入れよう。

 公爵家につくと、カミラ令嬢は勿論、公爵夫人と公爵夫人にソックリな令嬢と令息も出迎えてくれた。
 夫人の側に立つ人は誰だろう?微妙に観察されているように感じる。

 私は、公爵夫人に挨拶をして、ケヴィンお兄様に頼まれた本をレオン令息に渡した。私に見惚れていた、レオン令息は顔を赤らめながら本を受け取っていた。

 自分の妹のカミラと同じ年の8歳の私に顔を赤らめてどうする、私に顔を赤らめるなら、妹に優しくしろと言いたい。

「エミリー令嬢待ってました。ルーカス令息は既に庭にいます。行きましょう」

「カミラ令嬢、今日はとても良い天気ですね。お茶会の招待状を受け取ってから、今日をとても楽しみにしていたんです」
 
 私の一言で、カミラ令嬢は、それはとても嬉しそうな笑顔を浮かべた。庭に行くと、ルーカス君が手を降っている。

 既にテーブルには、お菓子やケーキが一杯並べられていた。私達が席につくと、メイド達がやってきて、お茶をいれる準備を始めた。カミラ令嬢の精霊が水色なのに、メイド達を守護する精霊が、皆赤色なのだ。

 「ねえ、カミラ令嬢、カミラ令嬢つきのメイドはどなたなの?あと、公爵夫人の側に立っていた、緑の服の方はどなたですか?」

「エミリー令嬢は、いきなり変わったことを、質問されるのですね。
 緑の服の方は、お母様の子供の時からの幼なじみのシェリー夫人です。私のお母様は隣国の伯爵家の出で、シェリー夫人は男爵家です。

 今は、メイドの総括をするメイド長をしてくれてます。私つきのメイドは、まだお客様をもてなすのは難しいと言われて、私の部屋に待機です」

「エミリーちゃんは、いつも変わった視点で話すからね。カミラ令嬢もなれると楽しいよ」

 ルーカス君にとって、私は変わり者みたいだ。まあ、ルーカス君は、後回し。今はカミラ令嬢の事を確認しなくては。

「そうなんですね、では乳母とかはみえますか?もしくは、赤ちゃんの頃の時に、カミラ令嬢を可愛がってくれた方は?」

「せっかくのお茶会なのに、どうしてそんなことばかり。
 お姉様とお兄様はシェリー夫人が世話しましたが、私はお父様の子供時代からの乳母に、そしてお祖母様が私を可愛がってくれてました。
 ただ、お祖母様も乳母も、今はお年を取られたので、領地におります」

 私達が話していると、お茶が入ったとメイドが席に茶器を運んできました。
 今日は、観察をするつもりできたので、メイドの動きをしっかり見ていた。すると、一人のメイドがカミラ令嬢の腕に、お茶を零した。

 当然、カミラ令嬢は熱いと、お茶がかかった腕を押えた。その拍子にメイドを突き飛ばす感じになった。

 メイド達は、カミラ令嬢がいつも自分達に気に入らないと暴力をふるうと怯えた感じで、お許しくださいとあやまった。
 近くに控えていた、侍従はメイド達の様子をみて、慌て走ってきた。

「お嬢様、乱暴はおやめください。ご友人の令嬢と令息もみえます」

 侍従が、カミラ令嬢に向かって言う。カミラ令嬢の腕をみると、赤くならない程度で、お茶がかかったかどうかがわからない状態だった。
 メイドについているほとんどか赤色だが、侍従達は、緑色よりが多いようだ。執事長も緑色だった。

 カミラ令嬢はいつも、メイド達にこんな嫌がらせをされているのかもしれない。私はカミラに話している侍従に、

「なぜ、カミラ令嬢にそんな事を言うのですか?そこのあなた、執事長を呼んで来なさい。あと、火傷を冷やす冷たいタオルも持ってきなさい」

 話をしていない、侍従に執事長を呼びに行かせた。そして、メイド達に向かって

「貴方達は、誰の命令でこんな愚かな事をしているのですか?
 それとも、自分が仕える家のお嬢様に、自ら率先して嫌がらせをしているのですか?」

 侍従は私にこいつは何を言っているんだと、不思議そうな顔をした。そこへ、もう一人の侍従と執事長が現れた。執事長も、また、何かカミラ令嬢が何かをして、自分を呼びつけたと思ったようだ。

 「どうされましたか、リーゼンフェルト伯爵令嬢?」

 「まず、貴方、早く冷やすものを渡しなさい」
 侍従から、濡れたタオルを取り上げると、すかさず、カミラ令嬢の腕を冷やした。

「私は、そこのメイド達の仕事を見ていました。そこのメイドは、カミラ令嬢にお茶をこぼしました。

 当然、熱いお茶がこぼされたわけですから、反射的に反対の手で火傷した手を庇うのは当然です。まるでカミラ令嬢に押されたかのように倒れるなんて、カミラ令嬢に悪意でもあるのですか?誰に頼まれたのですか?

 それに、この紅茶、まだ手をつけていませんが、お客に出すお茶ではないですね。言っている意味が判らないと言う顔をされてますので、執事長飲んでくださらない?飲めばわかります」

 執事長は訝しリながらも、私が飲めと言うので、素直に私に出されたお茶を飲んだ。飲んだ瞬間、執事長の顔が曇った。

「そもそも、カミラ令嬢つきのメイドは、まだ未熟ということで部屋に待機で、お茶に関して熟練のメイドですよね。
 お茶を零してしまうのは、熟練の人でもある事ですから何か言うつもりはないです。

 でも腕にお茶を零したのに謝りもせず、カミラ令嬢を悪者にし、なおかつ紅茶は、渋みが強く飲めたものではないのを、お客に出すなんて。

 このお茶会が失敗するようにしているとしか思えません。微妙に零すお茶も火傷をしないように証拠が残らないようにしてますよね?
 そこの侍従も、何があったか確認もせず、カミラ令嬢を責めました。
 私は他家ですが、使用人としてはどうなんですか?
 私達が8歳だからと馬鹿にしているのですか?」

 執事長は8歳の私が理路整然と言うので、面食らったように、びっくりしている。

 私は今は8歳だけど、前世や前前前世までの記憶がある。仕事のクレマー処理や社交界をしぶとく生き抜いてきたのだから、この程度でびくともしない。

 ルーカス君はオロオロしているし、カミラ令嬢はいつも自分が悪者で終わるはずが、私がカミラ令嬢のためにメイド達を糾弾しているのだ。そんな私をみてウルウルしている。

 そこへ、カミラ令嬢の兄のレオン令息が現れた。
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