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55話 戻る記憶
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「わたしね、おおきくなったら、レンくんとけっこんするのっ!」
「蓮くん、わたし達、ずっと友達だもんねっ!」
「蓮君、今日一緒に帰ろうよっ!」
~~~~
「…………っ」
ここは………病院かな?今、なんだか懐かしい夢を見た気がする。
「うぅ………頭いてぇ。すげぇズキズキする」
なんでこうなったんだっけ?記憶が飛ぶ程の痛みなんて、そうそうないと思うんだけど……無意識のうちに飲酒したか?
俺はそんな事を考えながら、ズキズキと痛む頭を抱え、ゆっくりと上半身を起こす。
体が妙にだるい。頭もなんでか思考を放棄しようとしている。
「………ダメだ、寝よ」
こういう時は一旦寝た方が良い。カーテンが閉まってるし、外も暗い。時間的にもまだ起きる時間じゃないだろう。何より、起きてちゃこの頭痛に耐えられそうにない。
~~~~
「んん……ふぁあ、良く寝た」
頭の痛みももう引いてる。あの頭痛はいったいなんだったんだ?
いつの間にか着替えてるし……。
「まさかッ!…………良かった。パンツはさすがに着替えられてないか」
さすがの俺も見ず知らずの人にパンツを着替えさせて貰うってのはメンタル的にキツイもんな。
ガラガラガラ。
先生か?いや、病室に来るのはどっちかと言うと看護師の方かな。とりあえず上半身だけでも起こしておこう。
「蓮、君……?」
「………那乃?」
わぁお。予想だにしてなかった人物だ。
ドアを開けて病室に入るなり、那乃は瞳に涙を溜め、潤んだ目でその場に佇んでいた。
「蓮君っ!!」
那乃は片手に持っていた紙袋を手離して俺に抱き着いてきた。
「おわっ!?ど、どうした、那乃?」
「………うぅ…ほんとに……ほんとに良かったよぉ……」
「……………ごめんな。また心配掛けて」
ソッと髪に手を置いた。一瞬体をビクつかせるもののそのあとは無反応のまま俺に抱きついたままだった。
俺は優しく手を動かしていく。
はぁ………格好つかねぇな。これが前みたいに人助けとかだったらまだカッコ良いんだがな。今回はただの頭痛だからな。こんな感動の再会みたいになると、なんか恥ずいな。
「ちょっと一回離れない?ちゃんと話したいしさ」
「もうちょっとだけ、ダメかな?」
「………お好きなだけどうぞ」
俺の理性よ。今だけは耐えてくれ、頼むぞ。病院でおっぱじめようとしたら、社会的にも人間的にも終わりだからな。
「学校、休んだの?」
髪を撫でながら俺はそう聞いた。どうにかして気を紛らわさないと、意識が那乃の胸に行っちまう。
「うん。昨日とかは海斗君がね」
「そっか。後で礼言っておかないとな。那乃も、ワザワザありがとな」
「蓮君のためだから」
「っ………!」
その発言を不意打ちで言うのはずるい。嫌でも意識しちまうじゃんか。
てか、那乃が顔を上げずに喋ったもんだから、かなりくすぐったかった。
「あ、そう言えば、そろそろ本格的に球技大会の練習しないとな」
「無理はダメだよ。入院までしてるんだから、安静にしなきゃ。あと四日じゃどうしようもないよ」
「へっ?四日?嘘だろ?」
俺が倒れたのは一週間前。てことは、三日間ぐらい俺、気絶してたことになるよな?
でも、なんでか空腹感とかは全くない。人間の体って不思議だなぁ。
四日か……。多少の無理はしてでも出たいな。これが最初で最後の球技大会だからな。来年はもう……。
「那乃」
「ん?」
「俺、絶対にそれまでに回復するから。だから……球技大会、絶対勝とうな!」
「うん!」
もう、知らんぷりは出来ない。アイツがどんな理由で俺の記憶を戻したのかは知らんが、戻った以上、出来る限りのことはしなければ。
瑠魅こと………そして那乃のこと。ずっと放置し続けるのは可哀想だ。
球技大会が終わったあと、那乃には言わないと。もう、ぬるま湯に浸かり続けるのはやめよう。俺がハッキリしないと、那乃が辛い思いをすることになる。
「蓮くん、わたし達、ずっと友達だもんねっ!」
「蓮君、今日一緒に帰ろうよっ!」
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「…………っ」
ここは………病院かな?今、なんだか懐かしい夢を見た気がする。
「うぅ………頭いてぇ。すげぇズキズキする」
なんでこうなったんだっけ?記憶が飛ぶ程の痛みなんて、そうそうないと思うんだけど……無意識のうちに飲酒したか?
俺はそんな事を考えながら、ズキズキと痛む頭を抱え、ゆっくりと上半身を起こす。
体が妙にだるい。頭もなんでか思考を放棄しようとしている。
「………ダメだ、寝よ」
こういう時は一旦寝た方が良い。カーテンが閉まってるし、外も暗い。時間的にもまだ起きる時間じゃないだろう。何より、起きてちゃこの頭痛に耐えられそうにない。
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「んん……ふぁあ、良く寝た」
頭の痛みももう引いてる。あの頭痛はいったいなんだったんだ?
いつの間にか着替えてるし……。
「まさかッ!…………良かった。パンツはさすがに着替えられてないか」
さすがの俺も見ず知らずの人にパンツを着替えさせて貰うってのはメンタル的にキツイもんな。
ガラガラガラ。
先生か?いや、病室に来るのはどっちかと言うと看護師の方かな。とりあえず上半身だけでも起こしておこう。
「蓮、君……?」
「………那乃?」
わぁお。予想だにしてなかった人物だ。
ドアを開けて病室に入るなり、那乃は瞳に涙を溜め、潤んだ目でその場に佇んでいた。
「蓮君っ!!」
那乃は片手に持っていた紙袋を手離して俺に抱き着いてきた。
「おわっ!?ど、どうした、那乃?」
「………うぅ…ほんとに……ほんとに良かったよぉ……」
「……………ごめんな。また心配掛けて」
ソッと髪に手を置いた。一瞬体をビクつかせるもののそのあとは無反応のまま俺に抱きついたままだった。
俺は優しく手を動かしていく。
はぁ………格好つかねぇな。これが前みたいに人助けとかだったらまだカッコ良いんだがな。今回はただの頭痛だからな。こんな感動の再会みたいになると、なんか恥ずいな。
「ちょっと一回離れない?ちゃんと話したいしさ」
「もうちょっとだけ、ダメかな?」
「………お好きなだけどうぞ」
俺の理性よ。今だけは耐えてくれ、頼むぞ。病院でおっぱじめようとしたら、社会的にも人間的にも終わりだからな。
「学校、休んだの?」
髪を撫でながら俺はそう聞いた。どうにかして気を紛らわさないと、意識が那乃の胸に行っちまう。
「うん。昨日とかは海斗君がね」
「そっか。後で礼言っておかないとな。那乃も、ワザワザありがとな」
「蓮君のためだから」
「っ………!」
その発言を不意打ちで言うのはずるい。嫌でも意識しちまうじゃんか。
てか、那乃が顔を上げずに喋ったもんだから、かなりくすぐったかった。
「あ、そう言えば、そろそろ本格的に球技大会の練習しないとな」
「無理はダメだよ。入院までしてるんだから、安静にしなきゃ。あと四日じゃどうしようもないよ」
「へっ?四日?嘘だろ?」
俺が倒れたのは一週間前。てことは、三日間ぐらい俺、気絶してたことになるよな?
でも、なんでか空腹感とかは全くない。人間の体って不思議だなぁ。
四日か……。多少の無理はしてでも出たいな。これが最初で最後の球技大会だからな。来年はもう……。
「那乃」
「ん?」
「俺、絶対にそれまでに回復するから。だから……球技大会、絶対勝とうな!」
「うん!」
もう、知らんぷりは出来ない。アイツがどんな理由で俺の記憶を戻したのかは知らんが、戻った以上、出来る限りのことはしなければ。
瑠魅こと………そして那乃のこと。ずっと放置し続けるのは可哀想だ。
球技大会が終わったあと、那乃には言わないと。もう、ぬるま湯に浸かり続けるのはやめよう。俺がハッキリしないと、那乃が辛い思いをすることになる。
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