余命1年の君に恋をした

パチ朗斗

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56話 前日練習

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「体の調子はどうだ?」

「まぁまぁだな。けど、明日のためにも調子上げてかないとだろ?」

「蓮……お前なんかさ、雰囲気変わったな。あ、良い意味でだぞ」

  そりゃ記憶を取り戻したからな、なんて現実味の無い話はさすがに言えねぇな。昔の俺なら言えたかもだが、さすがに高校生にもなってそう言うのは恥ずかしいな。

「でも、ほんとに良かったよな、前日に復帰出来てよ」

「あぁ、そうだな」

  今日は球技大会前日。俺の意識が戻った時点で体は何ともなかったが、大事をとって二日間ほど入院していた。昨日は色々あって疲れたから家でゴロゴロしていた。

「てか、福田とはどうなったんだ?」

「あぁぁ………」

  なんと説明すれば良いやら。あれは何もなかったと言っても良いのか?

  今日に限って福田は休みだから、福田とは話せない。まぁ話したとて、気まずいだけだろうけど。

「いやぁ、あれはただの冗談みたいなものだって言われたよ。ちょっと大袈裟に言ったら大事になり掛けたって。だからその謝罪」

「なるほどねぇ。なら、特に何もないんだな?」

「ん?あぁ」

  何か、探られてる?今の会話に違和感を覚えるようなこと、あったか?

「なぁ、本当は──」

「あれ?二人とも早いね」

  海斗の言葉を遮り、そう言ってきた冬華と瑠魅と那乃、上葉の四人がドア付近に居た。

  あれ以上の追求は躱しきれなかっただろうし、冬華には助けられた。

「また、後でな」

「あぁ」

  後で……か。まぁ、気にしても無駄か。

  にしても、未だに上葉があのメンバーの中に入っているのは違和感があるな。いつもはバレー部で固まってたはずたし。

  とは言っても、最近は那乃達と行動することも増えたって海斗が言ってたな。上葉って大人しそうな見た目の割にコミュ力高いのか?

「うし。じゃあ早速やろうぜ。今日のチーム分けどうする?」

「私と冬ちゃん、山邊君でどうかな?」

「わたしは良いと思うよ。ね、蓮君」

「そうだな。バランス的にも良いと思う」

  那乃は球技は出来るし、瑠魅もかなり運動神経が良いらしい。バレー部が居るとはいえ、負ける気はしないな。

「よし。じゃあ早速やろうぜ!」

  久々の運動だし、ケガしないようにだけはしないとな。那乃も瑠魅も居るし、カッコ良いところは見せられなくとも、最低限かっこ悪い姿は見せたくない。

  昔は大抵の運動だったら簡単にこなせたんだけどな。今は足のこともあるしハードには動けない。

「じゃあ、サーブは姫ちゃんたちのチームね」

「分かった。じゃあ蓮君、やっちゃって」

「俺?まぁ、やってはみるけど、あんま期待するなよ?」

  大丈夫。いつも通り、普通のジャンプサーブをやるだけだ。

「じゃあ、行くぞ」

  エンドラインの少し後ろでボールを構え、そう一声掛ける。

  俺の狙いは海斗ただ一人だけだ!

「おらっ!」

  俺は海斗目掛けてサーブを放つ。その瞬間。現実か幻聴か、車が猛スピードで走った時のような、風をキる音がした。正しく弾丸サーブだ。

「うぇっ!?」

  俺のサーブは狙い通り、海斗の股下へと落ちた。海斗はレシーブを空振り、そのままボールは海斗の股の下を通って行った。

  だが、誰一人としてボールを取りに行かない。全員の視線の先は俺に向いていた。

「………アレ?もしかして俺、またなんかやらかしちゃいました?」
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