余命1年の君に恋をした

パチ朗斗

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54話 途絶える意識

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「アンタ……誰だ?」

  コイツを目の前にしていると、ストレスが溜まる。平常を装うのがやっとだ。こんなに明確な嫌いと言う感情を持つなんて……ハッキリと言って初めてだ。

『君には恐れなるものが全く見えないね。低脳ともなると、相手との格の違いすらも見誤るものだね』

「……………要件は、なんだ?」

  俺は奥歯を噛み締め、怒りが表に出ないよう、必死に堪えた。コイツを前にして俺に出来るはせいぜいそれぐらいだ。

『はぁ?何その口の利き方?これだから無能とは話したくないんだよねぇ』

  顔が引くつく。拳を握る手に力が籠る。俺は必死にそれを抑える。手を出すのはダメだ。

『君みたいな無能と同じ空気なんて吸いたくないし、あまり一緒に居ると無能が移るかもだから手短にしておくよ。はぁ……あと数回、君と会わないといけないと思うとホントに憂鬱だよ。いっそ、?』

「っ………!!」

  その瞬間、俺の中で初めて恐怖が生まれた。背筋に走る寒気、全身を強烈な悪寒が襲う。

『良いねぇ、その表情』

「…………」

  体が動かなかった。口が開かなかった。全身に麻酔を受けたように、全く力が入らない。長距離を走ったあとのように目眩が起き、高速で回転した時のように平衡感覚がおかしくなっていた。

  それでも、全身から嫌な汗だけは異様に吹き出し、緊張感が場を支配していく。

『君の理解能力が追い付かないだろうし、教えてあげるよ。あぁ、なんて優しい神なんだ……さすがだね』

  もはや、目の前のアレに対して、怒りなんて感じなかった、感じれるはずがなかった。圧倒的過ぎた。体が小刻みに震えている。

  今の俺の頭にあるのはきっと、 死への恐怖。今まで感じたこともない感情。それを俺の脳は瞬時に理解し、呼吸が早く、浅くなる。

『思い出すと良いよ。まぁ、あまりの負担に死んじゃうかもだけどね』

  終始気持ちの悪い笑みを浮かべたソレは、俺の方へと歩みを進めた。俺はアレの歩みが異様にゆっくりで時間の経つ速度はとても遅く感じた。

  長いようで短い時間が過ぎ、ソレは俺の額に人差し指を当てた。

「っ…………!!」

  瞬間。俺には何が起きたか分からない。ただ、脳に何かが起きた。俺の意識は一瞬にして途切れた。

~~~~~~~~~~~~~~

  今回の話はかなり短めです。次は長めになるはずです……。ここが一区切りだと思ったので、許してください。

  それはそうと、かなり更新が遅れてしまい、申し訳ございません。投稿したと思っていたら出来ておらず……そのままもう一つの作品の方を書いていたため、かなり遅れました(まぁ、いつも遅いけど)。

  まだまだ終わりは見えませんが、是非、最後までこの作品に付き合って頂けると幸いです。

  どうか、これからもよろしくお願いします!
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