56 / 91
54話 途絶える意識
しおりを挟む
「アンタ……誰だ?」
コイツを目の前にしていると、ストレスが溜まる。平常を装うのがやっとだ。こんなに明確な嫌いと言う感情を持つなんて……ハッキリと言って初めてだ。
『君には恐れなるものが全く見えないね。低脳ともなると、相手との格の違いすらも見誤るものだね』
「……………要件は、なんだ?」
俺は奥歯を噛み締め、怒りが表に出ないよう、必死に堪えた。コイツを前にして俺に出来るはせいぜいそれぐらいだ。
『はぁ?何その口の利き方?これだから無能とは話したくないんだよねぇ』
顔が引くつく。拳を握る手に力が籠る。俺は必死にそれを抑える。手を出すのはダメだ。
『君みたいな無能と同じ空気なんて吸いたくないし、あまり一緒に居ると無能が移るかもだから手短にしておくよ。はぁ……あと数回、君と会わないといけないと思うとホントに憂鬱だよ。いっそ、残りも奪ってやろうか?』
「っ………!!」
その瞬間、俺の中で初めて恐怖が生まれた。背筋に走る寒気、全身を強烈な悪寒が襲う。
『良いねぇ、その表情』
「…………」
体が動かなかった。口が開かなかった。全身に麻酔を受けたように、全く力が入らない。長距離を走ったあとのように目眩が起き、高速で回転した時のように平衡感覚がおかしくなっていた。
それでも、全身から嫌な汗だけは異様に吹き出し、緊張感が場を支配していく。
『君の理解能力が追い付かないだろうし、直接教えてあげるよ。あぁ、なんて優しい神なんだ……さすがだね』
もはや、目の前のアレに対して、怒りなんて感じなかった、感じれるはずがなかった。圧倒的過ぎた。体が小刻みに震えている。
今の俺の頭にあるのはきっと、 死への恐怖。今まで感じたこともない感情。それを俺の脳は瞬時に理解し、呼吸が早く、浅くなる。
『思い出すと良いよ。まぁ、あまりの負担に死んじゃうかもだけどね』
終始気持ちの悪い笑みを浮かべたソレは、俺の方へと歩みを進めた。俺はアレの歩みが異様にゆっくりで時間の経つ速度はとても遅く感じた。
長いようで短い時間が過ぎ、ソレは俺の額に人差し指を当てた。
「っ…………!!」
瞬間。俺には何が起きたか分からない。ただ、脳に何かが起きた。俺の意識は一瞬にして途切れた。
~~~~~~~~~~~~~~
今回の話はかなり短めです。次は長めになるはずです……。ここが一区切りだと思ったので、許してください。
それはそうと、かなり更新が遅れてしまい、申し訳ございません。投稿したと思っていたら出来ておらず……そのままもう一つの作品の方を書いていたため、かなり遅れました(まぁ、いつも遅いけど)。
まだまだ終わりは見えませんが、是非、最後までこの作品に付き合って頂けると幸いです。
どうか、これからもよろしくお願いします!
コイツを目の前にしていると、ストレスが溜まる。平常を装うのがやっとだ。こんなに明確な嫌いと言う感情を持つなんて……ハッキリと言って初めてだ。
『君には恐れなるものが全く見えないね。低脳ともなると、相手との格の違いすらも見誤るものだね』
「……………要件は、なんだ?」
俺は奥歯を噛み締め、怒りが表に出ないよう、必死に堪えた。コイツを前にして俺に出来るはせいぜいそれぐらいだ。
『はぁ?何その口の利き方?これだから無能とは話したくないんだよねぇ』
顔が引くつく。拳を握る手に力が籠る。俺は必死にそれを抑える。手を出すのはダメだ。
『君みたいな無能と同じ空気なんて吸いたくないし、あまり一緒に居ると無能が移るかもだから手短にしておくよ。はぁ……あと数回、君と会わないといけないと思うとホントに憂鬱だよ。いっそ、残りも奪ってやろうか?』
「っ………!!」
その瞬間、俺の中で初めて恐怖が生まれた。背筋に走る寒気、全身を強烈な悪寒が襲う。
『良いねぇ、その表情』
「…………」
体が動かなかった。口が開かなかった。全身に麻酔を受けたように、全く力が入らない。長距離を走ったあとのように目眩が起き、高速で回転した時のように平衡感覚がおかしくなっていた。
それでも、全身から嫌な汗だけは異様に吹き出し、緊張感が場を支配していく。
『君の理解能力が追い付かないだろうし、直接教えてあげるよ。あぁ、なんて優しい神なんだ……さすがだね』
もはや、目の前のアレに対して、怒りなんて感じなかった、感じれるはずがなかった。圧倒的過ぎた。体が小刻みに震えている。
今の俺の頭にあるのはきっと、 死への恐怖。今まで感じたこともない感情。それを俺の脳は瞬時に理解し、呼吸が早く、浅くなる。
『思い出すと良いよ。まぁ、あまりの負担に死んじゃうかもだけどね』
終始気持ちの悪い笑みを浮かべたソレは、俺の方へと歩みを進めた。俺はアレの歩みが異様にゆっくりで時間の経つ速度はとても遅く感じた。
長いようで短い時間が過ぎ、ソレは俺の額に人差し指を当てた。
「っ…………!!」
瞬間。俺には何が起きたか分からない。ただ、脳に何かが起きた。俺の意識は一瞬にして途切れた。
~~~~~~~~~~~~~~
今回の話はかなり短めです。次は長めになるはずです……。ここが一区切りだと思ったので、許してください。
それはそうと、かなり更新が遅れてしまい、申し訳ございません。投稿したと思っていたら出来ておらず……そのままもう一つの作品の方を書いていたため、かなり遅れました(まぁ、いつも遅いけど)。
まだまだ終わりは見えませんが、是非、最後までこの作品に付き合って頂けると幸いです。
どうか、これからもよろしくお願いします!
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
夫と息子は私が守ります!〜呪いを受けた夫とワケあり義息子を守る転生令嬢の奮闘記〜
梵天丸
恋愛
グリーン侯爵家のシャーレットは、妾の子ということで本妻の子たちとは差別化され、不遇な扱いを受けていた。
そんなシャーレットにある日、いわくつきの公爵との結婚の話が舞い込む。
実はシャーレットはバツイチで元保育士の転生令嬢だった。そしてこの物語の舞台は、彼女が愛読していた小説の世界のものだ。原作の小説には4行ほどしか登場しないシャーレットは、公爵との結婚後すぐに離婚し、出戻っていた。しかしその後、シャーレットは30歳年上のやもめ子爵に嫁がされた挙げ句、愛人に殺されるという不遇な脇役だった。
悲惨な末路を避けるためには、何としても公爵との結婚を長続きさせるしかない。
しかし、嫁いだ先の公爵家は、極寒の北国にある上、夫である公爵は魔女の呪いを受けて目が見えない。さらに公爵を始め、公爵家の人たちはシャーレットに対してよそよそしく、いかにも早く出て行って欲しいという雰囲気だった。原作のシャーレットが耐えきれずに離婚した理由が分かる。しかし、実家に戻れば、悲惨な末路が待っている。シャーレットは図々しく居座る計画を立てる。
そんなある日、シャーレットは城の中で公爵にそっくりな子どもと出会う。その子どもは、公爵のことを「お父さん」と呼んだ。
訳ありな家庭教師と公爵の執着
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝名門ブライアン公爵家の美貌の当主ギルバートに雇われることになった一人の家庭教師(ガヴァネス)リディア。きっちりと衣装を着こなし、隙のない身形の家庭教師リディアは素顔を隠し、秘密にしたい過去をも隠す。おまけに美貌の公爵ギルバートには目もくれず、五歳になる公爵令嬢エヴリンの家庭教師としての態度を崩さない。過去に悲惨なめに遭った今の家庭教師リディアは、愛など求めない。そんなリディアに公爵ギルバートの方が興味を抱き……。
※設定などは独自の世界観でご都合主義。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日(2025.1.26)からHOTランキングに入れて頂き、ありがとうございます🙂 最高で26位(2025.2.4)。
※断罪回に残酷な描写がある為、苦手な方はご注意下さい。
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~
藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――
子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。
彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。
「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」
四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。
そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。
文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!?
じれじれ両片思いです。
※他サイトでも掲載しています。
イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる