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4・初めての国内視察
4-57・今、必要なこと
しおりを挟むティアリィは実の所母に何かを期待していたわけではなかった。
ただ、反対に気持ちを隠しておきたいだとか思うようなこだわりもなかっただけの話。
だから正直に気持ちを吐き出した。
これまでのミスティとの全てを。
ティアリィはミスティのことが好きだ。
その気持ちに変わりはない。
でも、だからこそ、最後の時の、あの、ミスティからの暴力とも言える触れ合いには耐えられなかった。
悲しくて堪らず、理由もわからず、どうしたらいいのか混乱して。
何故ミスティがそんなことをしたのか、自分はいったいどうすればよかったのか。
何もかもわからなかったのは、果たして自分にやはり、よくない部分があったかなのだろうか。
『しばらく距離を置いた方がいい』
そういったアーディの言葉に従ったのは、ティアリィ自身もそうした方がいい、そう思えたからだった。
加えてあの時アーディは、ミスティのあの行動の理由はただの嫉妬だと言っていたけれども、未だにティアリィはそれが理解できない。
今、話を聞いた母もどうやら同じことを思ったらしいことが伝わってきたけれど、何故だろうとティアリィは疑問だ。
ティアリィはミスティが好きだ。
他なんて知らないし要らない。
なのになぜユーファ殿下などと言う子供に嫉妬などするのだろうか。
アーディはそういう問題じゃないと言ったし、きっと母も同じ意見。
これはやはりティアリィの情緒が、まだまだ追いつき切っていない所為なのかもしれなかった。
だからこそ欲した時間。この2か月足らず。
視察と称して妹と旅を楽しむ傍ら、ずっと何処かで考え続けてきた。
それはミスティのこと。そして自分自身の感情についてだ。
ミスティが好きで、それに間違いはなくて、そしてミスティもティアリィに気持ちを向けてくれている。
あのいっそ暴力のような行為だって、ミスティはあくまでも愛ゆえに行ったことだった。
自分は多分しっかりと、そんなミスティからの愛を余さず受け止められるようにならなければならない。
それこそ、ミスティが好きで、これから先も共に過ごしていきたいのなら。
だったら自分に必要なのはきっと覚悟なのだろう、ティアリィは思った。
加えて母が更に続けた。
「貴方には確かに時間が必要だと思う。貴方が間違っているとも思わない。気持ちを整理するのだって大事ね。でもだからと言って向き合わないわけにはいかないわ。陛下と離れたいわけではないのでしょう? なら、少し落ち着いてからでいい、陛下と話し合ってみないと。きっと貴方達に足りないのは、落ち着いて冷静に話し合うことよ。ゆっくりでいいの。どれだけ迷ったってかまわないの。でもちゃんと自分の中を整理できたら。陛下ときっと向き合ってみましょうね。その為に必要なことがあるのなら、なんだって手助けしたいとも思っているから。ね?」
そうだ、間違いなく更に必要なこと。
それはミスティと向き合って話し合うこと。
自分の感情をミスティに伝えること。そしてミスティの感情を受け止めるのだ。
だってティアリィはミスティのことが好きなのだから。
つまり、それだけが今、ティアリィに分かる確かなことだった。
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