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4・初めての国内視察
4-46・母と話す⑨
しおりを挟むとにかく、ティアリィの存在によって勘違いした両親が、早すぎるタイミングでファルテを望んでしまったのが全て。
「ルーファにはあなたがいたわね。貴方はルーファに夢中だった。でもルーファは貴方とは違った。ルーファは周囲から勝手に魔力を取り込んだりなんて出来なくて、貴方よりもよほどたくさん魔力が要って、それで……」
うっすらと覚えている。
ルーファが生まれて、おそらくファルテを成してしまってからだろう、母はいつも伏せるようになっていた。
おそらく魔力が足りず、起きていられなかったのだろう。
空腹を訴えなくルーファに魔力を与え、臥せり、父と寝室に籠る。
その間ずっとティアリィはルーファといた。
ルーファが可愛くてかわいくて離れられなかった。
ティアリィは両親よりも魔力が多い。
余程熱心に魔力を注いで成したのだろう、それはルーファも同じで、もちろん、ティアリィとルーファでは魔力量に明確な差があるのだが、それでもルーファは両親より魔力量が多かった。
おそらく生まれてすぐなど余計にたくさんの魔力を必要としたはずだ。それこそ、ファルテを育てる為に必要な魔力が足りなくなるぐらいに。
ファルテは両親より魔力量が少なかった。
おそらく成した時、ティアリィやルーファの時より魔力が少なかったせいなのだろう。
その上で、育てる魔力まで足りなくなり、結果、障害を追ってしまった。
自分の所為だ。
ティアリィは思った。元々ずっとファルテについては、両親も含め負い目に感じてきた。
まさかたった今聞いたような状態だったとまでは思っていなかったけれど、自分の存在が両親に誤解を与えたのだろうということぐらいは理解していた為である。
だが、こう明確に言葉にされてしまうと、罪悪感に押し潰されそうになる。
知らず、母に縋る手に力が入ったことに気付いたのだろう、母は慌てて、
「ああ、ごめんなさい、ティアリィ、貴方を責めているわけではないの。貴方の所為ではないのよ。だって貴方にそんなことがわかるはずがないわ。貴方は貴方としてただ生まれてきただけなのに。ちゃんと知識として知っていた、教育を受けてきていたはずなのにそれを軽んじて、勘違いした私達が悪いのよ」
自分たちの浅はかさが、そんな事態を引き起こした。
これは母の懺悔だ。でも、やはり自分の存在が原因なのだろう、ティアリィはどうしてもそう感じてしまう。
自分の異常性を理解しているがゆえに、余計に。
ティアリィが悪い訳ではない、母は繰り返しそう告げた。悪いのは自分たちなのだと、そう。
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