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3・偽りの学園生活
3-52・休日③
しおりを挟むティアリィの休日はそんな風にナウラティスで過ごすばかりではなく、かと言ってそれ以外だとファルエスタの王宮にばかりいるわけでもなく。
その日は少しだけ時間が取れたので、最近ずっと我慢ばかりさせているコルティを構うこととした。
つまり、コルティを連れてファルエスタの城下町へと、買い物へ繰り出したのである。
一応、誘ったアーディとグローディには断られたのだけれど、ピオラは、
「あら、たまにはいいかもしれませんわね」
と頷いてくれたので一緒に行くことになった。当然、ミデュイラ嬢やフォセシア嬢も一緒だ。
ちなみにグローディは少し前に言った視察で、本人曰くの天使に出会ったらしく、今はその天使の為に自分を磨くことに余念がない。
今まで以上にティアリィの手伝いも率先してやってくれているのでとても助かってはいるのだけれど、あまりの熱量にほんの少しばかりの危うさも感じている。
だけどアーディが、今は好きにさせるしかないでしょう。と言っていたし、正直そこまでの余裕はないので、あまり彼のことを詳しく確かめるのは控えることにした。
なので当然このような休日の買い物、いわば息抜きになど同行するはずがなく、アーディはそんなグローディの様子の方が気になるので、そちらについているとのこと。アーディは相変わらずしっかりしすぎた子供だった。
それはともかく買い物である。
護衛はナウラティスから付いてきた3人のうち、年若いキジェラとトリンシンの二人に、ファルエスタから借り受けている何人か。
ただし今回の買い物は、実はあえてファルエスタ側には知らせておらず、完全なお忍びと言えるものだった。
彼らにも後日の報告とするようお願いしている。
当然ティアリィはいつも通り、変化と認識阻害の魔術の重ね掛けで、ピオラ達三人はそこまではしておらず、服装を庶民風にしたのみ、コルティも同じだ。
だが、服というのがとても重要で、それだけである程度なら城下町に溶け込むことが出来るようだった。
とは言え、仕草や態度まではどうにもならないので、精々が貴族のお忍び風ぐらいにしか見えないのだけれど。
もっとも、多くの貴族たちがこんな風に、見え見えのお忍びで買い物などしたりするので、そういう意味ではきっと目立たないと思うことにする。
ほとんど初めて歩く城下町は、活気にあふれ、事前情報通り、どうもとても治安も良いようだった。
現に実家が商会故に色々な国に行ったことがあるミデュイラ嬢も、
「こんなに明るい雰囲気の城下町って言うのも珍しいですよぉ!清掃も行き届いていますし、治安もよさそうです」
と言っていたので、余程なのだと思う。
自分の国の町にすらほとんど行かないティアリィの目には、何もかもが目新しく映るばかりだった。
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