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3章:学校生活
14:購買
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俺にとって購買は魔境のような場所だった。
ずっと弁当を作って学校に行っていたから、食事を買う目的で、購買を使ったことがなかった。
一度、まだガレットと出会う前、4時間目の終わり頃にシャープペンの芯を切らしてしまったことがあって、やむを得ずに、一番混んでいる時間帯に購買に行ったことがある。その時はシャープペンの芯を買うどころか、あまりの人の多さに何を売っているのか、見ることすら出来なかった。昼時の購買の混み方はとにかくすごい。
コンビニならまだなんとかなるかもしれない、ということで、コンビニへ行ったら、やっぱり人はそこまで多くなかった。うちの学校の制服を着た生徒達はちらちらいて、昼時だから並びはしたけれど、思ったよりも時間はかからなかった。 無事にシャープペンの芯を買って帰ることが出来たし、その日はコンビニスイーツも一緒に買ってお昼に食べた。
外に出るという手間がある分、コンビニの方がまだ空いているんだと思う。
それ以来、人の多さに躊躇してしまって、購買には近づけていなかった。でも、学校で過ごしているうちに、購買で一つ気になる商品の噂が入っていた。でも、今日は安全策として、コンビニに行こうと思っている。さすがに、お昼なしで飲み物だけ、というのはつらいから。
「ガレット、今日のお昼はコンビニに行って買おう。多分、コンビニだったら何かしらあって、昼なしは避けられるから」
「ああ、分かったよ」
ガレットが頷く。なんとか、これで昼食は確保出来たと思った。
二時間目は移動教室だった。俺達の教室のある階から、ガレットと一緒に、一階まで降りていく。すれ違う女子生徒達が、全員ガレットをじっと見て、そして顔を赤くしている。隣を歩いていて、俺もなんだかドキドキしてしまった。
ちら、とガレットの方を見る。なんだか、少しだけ浮かない顔をしている。
「どうしたんだ?」
「……やっぱり、お昼に章太郎の食事が食べられない、というのは少し残念でね」
ガレットは小さく溜息をついた。
「ごめん。家に帰ったら好きなもの作るから……」
そう言っても、ガレットの落ち込んだ様子は変わらなかった。
けれど、ガレットの足取りは止まる。俺も、彼につられて足の動きが止まる。
「ん?」
『購買部・限定メニュー入荷! 一日10食限定! 唐揚げ弁当!』と書いてある。
購買部の唐揚げこそ、俺が気になっていたメニューだった。
購買部の唐揚げは美味しい、と評判で、買えた先生が、その美味しさを授業内で絶賛するほどの美味しさ。すごく気になっていた。
ガレットはじっとその張り紙を眺めている。
「購買部? 一体なんなんだい?」
ガレットが訊ねてきた。俺はガレットに対して、購買部の説明をする。すると、ガレットがきらきらとした表情に変わる。
「章太郎の弁当が食べられないんだ。もしよかったら、その“購買部”に行ってみないかい?」
ガレットはノリノリだ。
「あ、あの……ガレット、その、昼時の購買は……」
ガレットは、期待感できらきらとした目をしている。俺はなんだか言い出すことが出来なかった。昼休みの購買はとんでもなく混んでいるということを。
それに、美味しい唐揚げが弁当になるのだ。きっと、それを求めて買いに来る生徒達が大勢いるだろう。俺達みたいに、いつも購買を使わない生徒も、購買を使うかもしれない。
「どうだい? 章太郎」
「……じゃ、じゃあ……行ってみようか……」
期待しているガレットに対してNOとは言えず、俺は肯定の返事を返してしまった。
これから、波乱が起こるかもしれない。
ずっと弁当を作って学校に行っていたから、食事を買う目的で、購買を使ったことがなかった。
一度、まだガレットと出会う前、4時間目の終わり頃にシャープペンの芯を切らしてしまったことがあって、やむを得ずに、一番混んでいる時間帯に購買に行ったことがある。その時はシャープペンの芯を買うどころか、あまりの人の多さに何を売っているのか、見ることすら出来なかった。昼時の購買の混み方はとにかくすごい。
コンビニならまだなんとかなるかもしれない、ということで、コンビニへ行ったら、やっぱり人はそこまで多くなかった。うちの学校の制服を着た生徒達はちらちらいて、昼時だから並びはしたけれど、思ったよりも時間はかからなかった。 無事にシャープペンの芯を買って帰ることが出来たし、その日はコンビニスイーツも一緒に買ってお昼に食べた。
外に出るという手間がある分、コンビニの方がまだ空いているんだと思う。
それ以来、人の多さに躊躇してしまって、購買には近づけていなかった。でも、学校で過ごしているうちに、購買で一つ気になる商品の噂が入っていた。でも、今日は安全策として、コンビニに行こうと思っている。さすがに、お昼なしで飲み物だけ、というのはつらいから。
「ガレット、今日のお昼はコンビニに行って買おう。多分、コンビニだったら何かしらあって、昼なしは避けられるから」
「ああ、分かったよ」
ガレットが頷く。なんとか、これで昼食は確保出来たと思った。
二時間目は移動教室だった。俺達の教室のある階から、ガレットと一緒に、一階まで降りていく。すれ違う女子生徒達が、全員ガレットをじっと見て、そして顔を赤くしている。隣を歩いていて、俺もなんだかドキドキしてしまった。
ちら、とガレットの方を見る。なんだか、少しだけ浮かない顔をしている。
「どうしたんだ?」
「……やっぱり、お昼に章太郎の食事が食べられない、というのは少し残念でね」
ガレットは小さく溜息をついた。
「ごめん。家に帰ったら好きなもの作るから……」
そう言っても、ガレットの落ち込んだ様子は変わらなかった。
けれど、ガレットの足取りは止まる。俺も、彼につられて足の動きが止まる。
「ん?」
『購買部・限定メニュー入荷! 一日10食限定! 唐揚げ弁当!』と書いてある。
購買部の唐揚げこそ、俺が気になっていたメニューだった。
購買部の唐揚げは美味しい、と評判で、買えた先生が、その美味しさを授業内で絶賛するほどの美味しさ。すごく気になっていた。
ガレットはじっとその張り紙を眺めている。
「購買部? 一体なんなんだい?」
ガレットが訊ねてきた。俺はガレットに対して、購買部の説明をする。すると、ガレットがきらきらとした表情に変わる。
「章太郎の弁当が食べられないんだ。もしよかったら、その“購買部”に行ってみないかい?」
ガレットはノリノリだ。
「あ、あの……ガレット、その、昼時の購買は……」
ガレットは、期待感できらきらとした目をしている。俺はなんだか言い出すことが出来なかった。昼休みの購買はとんでもなく混んでいるということを。
それに、美味しい唐揚げが弁当になるのだ。きっと、それを求めて買いに来る生徒達が大勢いるだろう。俺達みたいに、いつも購買を使わない生徒も、購買を使うかもしれない。
「どうだい? 章太郎」
「……じゃ、じゃあ……行ってみようか……」
期待しているガレットに対してNOとは言えず、俺は肯定の返事を返してしまった。
これから、波乱が起こるかもしれない。
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