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21章 聖女と魔女とエルフ
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「スーウェンさんに魔力の扱い方を教えてもらったほうがいいですね」
シェリーはオルクスが魔力を扱いきれないで姿を見て、そう答える。魔導師であるスーウェンならオルクスに的確に教えることができるであろう。
「魔力の扱い方ならシェリーがここで教えてあげればいいんじゃない?このままだと下手すれば暴発しそうだね」
カイルがその様にシェリーに言うが、シェリーは睨むような視線でカイルを見上げ
「私は炎王と同じで他の人に魔術を教えることはできません」
と言葉を放つ。炎王と同じとシェリーは言葉にするが炎王の様に創造魔術があるわけではない。
シェリーはオリバーから魔術の概念を教えられる前に前世の記憶を元に魔術を構築してしまったために、この世界の人達と違う概念で魔術というものを使用してしまっているのだ。だから、教えられない。
「そんなんだ。まぁ、俺たち竜人も他の種族と違うから教えられないのは同じなんだけど、今のオルクスをこのままってのは危ないな」
そう言ってカイルは気分悪そうなグレイとオルクスの有り様を呆然と見ているリオンに視線を向ける。
少し考えるような素振りを見せ、リオンの前に2本の小瓶を差し出す。
「リオン。コレをスーウェンに飲ませて、連れて来てくれないか?」
「これは?」
いきなり小瓶を目の前にぶら下げられたリオンは不審な目を小瓶に向けている。どう見ても、スーウェンが撃沈し、グレイが未だに吐き気を催している凶元のオリバー作回復薬にしか見えない。
「こっちのエグい緑色の液体が回復薬で、こっちのオレンジ色の液体は中和剤みたいな物?」
「中和剤?」
「ああ、『カークス氏の劇薬』は冒険者の間ではよく効くけど不味過ぎると有名だからね。どうにかして、後味をなんとか出来ないかと色々試して一番良かったのが、とある果実酒だったと」
冒険者たちの間では有名な話だ。よく効く回復薬だが、その後の工程に支障をきたす程の回復薬では使えないと。それも戦いの最中に飲もうものなら、生きて帰れない物だとまで言われている代物だ。
以前シェリーは一度オリバーに味の改善を要求したが、その時の返答は『不味いからいいのだよ』と言われてしまった。これはこれでオリバーの拘りらしい。
「カイル。なんでもっと早く出してくれなかったんだ」
座り込んでいるグレイが力無くカイルに抗議する。確かに、カイルが出していれば、グレイがこのように体は回復しているが、気分の悪さでまともに動けないと言う状態にはなっていなかっただろう。
「一度はそのまま飲んでみないとね」
カイルはニコリと笑って言う。とてもいい笑顔だ。カイルも経験者なので、グレイの状態をよくわかっているのだろう。
「ということだから、先に回復薬を飲ませてから、オレンジの方を飲ませてないと後が大変だから気をつけるように。あと、スーウェンが嫌がっても飲まして連れて来てくれ」
リオンは凄く嫌な物を貰ったかのように小瓶を指でつまみ、この場を離れて行った。
カイルはグレイにもオレンジの液体が入った小瓶を渡し、オルクスの方に向かって行った。今のオルクスの状態を確認するために手合わせをするつもりなのだろう。
シェリーはこの場にいる意味はないと、踵を返そうとしているとグレイが話かけてきた。
「なぁ。オルクスがあんなに魔力を持っているって俺知らなかったんだけど、シェリーは知っていたか?」
獣人でも種族的に魔力を多く持つ者はいるが、それは別として、獣人の魔力の保有量は総じて低い。だから、獣人は己の肉体を武器にして戦うことが多いのだ。
しかし、遠距離攻撃を得意とする魔導師には苦手意識が向いてしまう。いつかオルクスが言っていたことだ。『魔導師は嫌いだ』と。
シェリーはオレンジの液体を飲んで少しスッキリした様子のグレイを見る。羨ましいそうであり悔しそうな、そんな相反する表情をグレイはしている。
「グレイさん。ラース家は魔導師の家系です。多少の差はありますが、総じて魔力量は多い一族です。ナディア様は血族にすべての者に祝福を与えていますよ」
シェリーはグレイの質問に答えず、ラース家のことに付いて語る。その言葉にグレイは驚いた様にシェリーを見上げた。
「グレイさんが何を考えているかは知りませんが、神の祝福は時に種族の概念を凌駕するものです。ただの人族が3000年の時を生きる事ができたように」
「神の祝福・・・今のオルクスがそうだと?」
グレイが信じられないと言うふうに言葉を漏らす。しかし、シェリーはそれには答えず屋敷の中に戻って行った。
後ろから壁に何かが激突する音が聞こえ、シェリーは結界を張るのを忘れていたと、ふと思い出した。
その頃スーウェンの部屋では
「コレを飲め」
「嫌です」
「飲まないなら無理やり突っ込むぞ」
「無理です」
涙目で拒否しているスーウェンにリオンがオリバー作回復薬を無理やり飲まそうとしていた。
ベッドの上で動けなくなっているスーウェンに怪しい液体が入った小瓶を押し付けているリオンがいる。そして、リオンの手を押しのけるスーウェン。
「絶対に飲みません!」
何も知らない第三者から見れば、怪しい光景であった。
シェリーはオルクスが魔力を扱いきれないで姿を見て、そう答える。魔導師であるスーウェンならオルクスに的確に教えることができるであろう。
「魔力の扱い方ならシェリーがここで教えてあげればいいんじゃない?このままだと下手すれば暴発しそうだね」
カイルがその様にシェリーに言うが、シェリーは睨むような視線でカイルを見上げ
「私は炎王と同じで他の人に魔術を教えることはできません」
と言葉を放つ。炎王と同じとシェリーは言葉にするが炎王の様に創造魔術があるわけではない。
シェリーはオリバーから魔術の概念を教えられる前に前世の記憶を元に魔術を構築してしまったために、この世界の人達と違う概念で魔術というものを使用してしまっているのだ。だから、教えられない。
「そんなんだ。まぁ、俺たち竜人も他の種族と違うから教えられないのは同じなんだけど、今のオルクスをこのままってのは危ないな」
そう言ってカイルは気分悪そうなグレイとオルクスの有り様を呆然と見ているリオンに視線を向ける。
少し考えるような素振りを見せ、リオンの前に2本の小瓶を差し出す。
「リオン。コレをスーウェンに飲ませて、連れて来てくれないか?」
「これは?」
いきなり小瓶を目の前にぶら下げられたリオンは不審な目を小瓶に向けている。どう見ても、スーウェンが撃沈し、グレイが未だに吐き気を催している凶元のオリバー作回復薬にしか見えない。
「こっちのエグい緑色の液体が回復薬で、こっちのオレンジ色の液体は中和剤みたいな物?」
「中和剤?」
「ああ、『カークス氏の劇薬』は冒険者の間ではよく効くけど不味過ぎると有名だからね。どうにかして、後味をなんとか出来ないかと色々試して一番良かったのが、とある果実酒だったと」
冒険者たちの間では有名な話だ。よく効く回復薬だが、その後の工程に支障をきたす程の回復薬では使えないと。それも戦いの最中に飲もうものなら、生きて帰れない物だとまで言われている代物だ。
以前シェリーは一度オリバーに味の改善を要求したが、その時の返答は『不味いからいいのだよ』と言われてしまった。これはこれでオリバーの拘りらしい。
「カイル。なんでもっと早く出してくれなかったんだ」
座り込んでいるグレイが力無くカイルに抗議する。確かに、カイルが出していれば、グレイがこのように体は回復しているが、気分の悪さでまともに動けないと言う状態にはなっていなかっただろう。
「一度はそのまま飲んでみないとね」
カイルはニコリと笑って言う。とてもいい笑顔だ。カイルも経験者なので、グレイの状態をよくわかっているのだろう。
「ということだから、先に回復薬を飲ませてから、オレンジの方を飲ませてないと後が大変だから気をつけるように。あと、スーウェンが嫌がっても飲まして連れて来てくれ」
リオンは凄く嫌な物を貰ったかのように小瓶を指でつまみ、この場を離れて行った。
カイルはグレイにもオレンジの液体が入った小瓶を渡し、オルクスの方に向かって行った。今のオルクスの状態を確認するために手合わせをするつもりなのだろう。
シェリーはこの場にいる意味はないと、踵を返そうとしているとグレイが話かけてきた。
「なぁ。オルクスがあんなに魔力を持っているって俺知らなかったんだけど、シェリーは知っていたか?」
獣人でも種族的に魔力を多く持つ者はいるが、それは別として、獣人の魔力の保有量は総じて低い。だから、獣人は己の肉体を武器にして戦うことが多いのだ。
しかし、遠距離攻撃を得意とする魔導師には苦手意識が向いてしまう。いつかオルクスが言っていたことだ。『魔導師は嫌いだ』と。
シェリーはオレンジの液体を飲んで少しスッキリした様子のグレイを見る。羨ましいそうであり悔しそうな、そんな相反する表情をグレイはしている。
「グレイさん。ラース家は魔導師の家系です。多少の差はありますが、総じて魔力量は多い一族です。ナディア様は血族にすべての者に祝福を与えていますよ」
シェリーはグレイの質問に答えず、ラース家のことに付いて語る。その言葉にグレイは驚いた様にシェリーを見上げた。
「グレイさんが何を考えているかは知りませんが、神の祝福は時に種族の概念を凌駕するものです。ただの人族が3000年の時を生きる事ができたように」
「神の祝福・・・今のオルクスがそうだと?」
グレイが信じられないと言うふうに言葉を漏らす。しかし、シェリーはそれには答えず屋敷の中に戻って行った。
後ろから壁に何かが激突する音が聞こえ、シェリーは結界を張るのを忘れていたと、ふと思い出した。
その頃スーウェンの部屋では
「コレを飲め」
「嫌です」
「飲まないなら無理やり突っ込むぞ」
「無理です」
涙目で拒否しているスーウェンにリオンがオリバー作回復薬を無理やり飲まそうとしていた。
ベッドの上で動けなくなっているスーウェンに怪しい液体が入った小瓶を押し付けているリオンがいる。そして、リオンの手を押しのけるスーウェン。
「絶対に飲みません!」
何も知らない第三者から見れば、怪しい光景であった。
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