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本編
友兄のキスで
しおりを挟む恐る恐る触れていた手は、今はもうしっかりと裸の背中を抱き締めていた。
誰かの肌にこんな風に触れたことがない。けど、すごく気持ちがいいと感じる。
容赦のないキスに酸欠なのか頭がくらくらし始めた。むしろ、もう「キス」なんて甘いものじゃないのかもしれない…そんな風にさえ思えてしまう。
「とも、にぃ」
心臓はかなりドキドキしている。
でも、これをどう表現したらいいのかわからないけれど、気分は「落ち着いて」きている。友兄が俺の恋人なんだって信じられる。キスが、俺の中の不安を失くしていく。
「理玖」
唇の間で名前を呼ばれる。
たったそれだけで体が震えた。
気分とか……そんなのは関係なしに、心臓のドキドキに比例して、体の中に経験のない熱がたまっていくのを感じていた。それが何なのか理解するのにはそう時間はいらなかった。
「…っ」
パジャマというのは、比較的薄い布でできている。だから、ふと視線を下に流した時に、自分のソコの変化を目の当たりにしてしまった。
「や…っ」
「理玖?」
手に不自然に力が入ってしまったらしい俺から、友兄が少し体を離した。
どうしよう、滅茶苦茶恥ずかしい。
気付かれたくなくて足をソファの上にあげて両手に抱えた。どうしたらいいかわからなくて、俯いてしまった。
沈黙は、ほんの少しの間だけだったと思う。
でも、その僅かな時間の間に目じり涙が溜まってしまう。
……そしたら、友兄が優しく抱きしめてくれた。
「と…」
「大丈夫だよ」
「友兄…」
「お互いのことが好きで、抱きあってキスをしているんだから、当然のことでしょう?」
「…でも……っ」
なんだか、自分だけ、っていう気がする。
友兄はどこも変わってないのに。
「休もうか」
「え」
いきなり何を言われているんだろう…って考える間もなく、あっさりと友兄に抱きあげられた。
「っ!!」
所謂「お姫様抱っこ」なわけで、なんというか、それなりに重いはずなのに、友兄は顔色一つ変えずに俺を抱き上げたまますたすたと部屋の中を歩いた。
「友兄……歩けるからっ」
「駄目」
どうして駄目なんだろうか。
友兄は器用に部屋の電気を消すと、リビングに面した扉も器用に開けた。
ひんやりとした空気が流れ出てくる。
暗くてよく見えなかったけれど、どうやらそこは寝室のようだった。
友兄は部屋の電気はつけないままに俺をベッドにおろすと、枕元のベッドライトだけを点けた。
ほんのりとした薄暗いオレンジ色が部屋の中を満たす。
「友兄」
「同じだから。……俺も」
何が……って聞く前に、また唇をふさがれた。
すぐに舌が入り込んできて、上顎をくすぐるように動き始める。
「あふ……」
覆いかぶさってきた友兄の背中に、両腕をまわす。そうすると余計に体が近付く。
友兄の手が俺の脚に添えられて、促されるままに足を広げた。
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