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本編

友兄の腕の中で眠る

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 キスをしたまま友兄は俺の脚の間に体を滑り込ませてくる。

「っ、あっ」

 敏感になっていたソコが友兄の体に擦られて震えた。

「理玖……わかる?」

 キスの合間の言葉に、何がだろう…って靄のかかりはじめた頭でぼんやり考えた。
 友兄はキスをしたまま…俺に腰を押しつけてきた。

「っ」

 ありえない、というか、そうなのか、というか、とにかく、驚いて体が固まった。

「わかる?」

 唇を離した友兄は俺の耳元でもう一度囁いてくる。

「……わか、る」
「だから、同じだと言ったでしょ?」
「……う、ん」

 けど、羞恥心が消えたわけじゃない。
 どうすりゃいいんだ、っていう焦りは一向になくならない。
 ……このまま、友兄に抱かれてしまうんだろうか、とも。
 どうしたらいいのかわからなくて余計に固まっていたら、友兄の苦笑が聞こえた。
 それから、体にかかっていた体重がなくなって、俺の隣に横たわった友兄に抱き寄せられた。

「今は何もしないから。ただ……こうやって抱き締めて眠ってもいい?」

 それは意外というか……。でも、それまでの緊張は一気にほぐれてくる。

「…うん」

 実際、眠れるかどうかなんてわからなかったけれど、さっきまであれほど感じていた焦りはなくなっていた。
 友兄の腕に抱き寄せられて、頭の下にたくましい腕が入り込んで。
 すぐ近くにある裸の胸にはドキドキしてしまったけれど、体温が心地よかった。

「お休み、理玖」
「おやすみなさい」

 頭をなでられて、髪をすかれて。
 ドキドキしていた心臓はいつの間にか落ち着いていて、ゆっくり、確実に、眠気が体を満たしていった。

 すぐ近くにある温かいものが、すごく気持ちよかった。
 手を伸ばせば、またすぐそれに包まれる。
 懐かしい匂いと、胸の中一杯に広がる安心感。
 大好きな、大好きな、たった一人の、俺の恋人。





「理玖」

 声を遠くに感じた。
 折角気持ちのいい夢を見ていたのに。

「…ん…、なに……」
「そろそろ起きた方がいいと思うよ。ゆっくり朝ご飯を食べたいしね」
「………友兄?」

 母さんの声じゃなかった。
 でも、どうして友兄がいるんだろう。
 重たい瞼を持ち上げると、ぼんやりする視界に友兄の姿が映る。

「友兄」
「おはよう、理玖」

 ベッドの上で体を起して座った俺にの頬に、音をたてるキス。

「うん、おはよう」

 俺も『いつものように』お返しのキスをする。
 そしたら、くすっていう笑い声。

「…友兄?」
「いつまでも寝ぼけてると、このまま襲うよ?」
「襲うって………」

 それで、はたっと自分が寝ていたベッドを見て、天井を見上げて、部屋の中を見て……そこでようやく思い出した。

「!」

 昨日は暗くてよく見えなかった友兄の寝室は、友兄らしく整っていて余計なものは何一つ置かれていない。

「えええっと」

 顔がほてっていく。
 友兄はもう着替えが済んでいて、腰には黒いエプロンを巻いていた。

「思い出した?」
「えーと……うん…」

 友兄はまた笑った。笑って……、俺の唇に指を押し当ててくる。

「ここにキスをしてもいい?」
「…………うん」

 今更聞かなくても…っていう気持ちはあった。改めて聞かれると恥ずかしいし、聞き方もなんだかエロいんですけど……。


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