おい、のび太。そりゃないぜ!

ーー35年前。東京都練馬区のとある住宅街に、未来から猫型ロボットがやって来たらしい・・・・・・

この噂は「当時の近隣住民の話」として語り継がれてきた。

噂の内容には、若干の地域差があるものの、おおむね共通しているのは「猫型ロボットは、あらゆる物の大きさを自在に変えるライトを持っていた」や、「離れた場所へ一瞬で移動するドアがある」、「空を自在に飛ぶ風車が付いたヘルメットで移動する」など、常識では考えられないような道具をいくつも持っていたことだ。

それらの道具を使えば、この地球上に残されていた食料危機や病気、感染症、紛争の解消に至るまで、あらゆる問題を解決する可能性を秘めていたともいわれている。

だが、どれほど優れた道具であっても、重要なのは使い手だ。

高度な人工知能を有する猫型ロボットは、どんな未来を計算したのだろうか。

使い手に選ばれたのは、小学5年生の少年だったと言われている。そして世界がいま、滅亡に向かっているのだと・・・・・・。

これがもし、35年前の世界だったならば、こんな絵空事を信じる人はいなかっただろう。

だが、いま我々人類のなかで、この噂話を疑う人間はほとんどいない。

「語り継がれてきた歴史」となりつつある。

この噂話の最後は、近隣住民のこんな目撃情報で終わる。


ーー妙な電話ボックスに少年がこんなことをつぶやいていました。
「もしも人間がセミと同じ生き方をしたら」って・・・・・・

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人類の寿命はある日、生殖適齢期とされる18歳を迎えた日から7日間と決まった。

世界のルールが変わった瞬間は、テレビや新聞で大々的に報道された訳でもなく、当時流行していたSNSで拡散した訳でもない。

18歳を超えていた大人たちは一斉に、まるで一種の悟りを開いたかのように、自らの余命が7日間になったと知ったという。

多くの大人たちは、自らが死を迎える運命を嘆き、そして若くして命を落とす子どもたちのことを憂いた。

そして、せめて子どもたちが18歳に育つまでの生活基盤だけは残そうと、各国の大人が英知を結集し、自らの死の瞬間まで、必要な社会システムの構築にあてたという。

それは「人類による天地創造の7日間」と呼ばれ、今の子どもたちが大人になるまでの18年間を支えている……。
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