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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?

転生!? ――5

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 労わるように頭を撫でられ、男性は悲しそうにずーんと肩を落としてしまった。哀愁漂うその姿に、なんて言葉を掛ければいいのかわからなかった。そして、さっきさらっと言っていたけれど、七歳のまま眠らせることになったってどういうこと? そんなことが可能なのか?

「あの。七歳のまま眠らせたって、そんなに簡単に出来るんですか?」
「魔法を使ったさ」

 魔法が使える世界なのか。やっぱり日本じゃないんだな、ここ。沙織サオリ、あのあとどうなったんだろう。無事に生き残ってくれていたら良いのだけど。

 猫耳少女がお茶を淹れて「どうぞ」と差し出してきた。だけど、そのお茶を飲むのを躊躇ってしまった。猫耳少女がぺたんと耳を下げる。

「えーっと、あなたたちはオレの家族ってことでいいんですか?」

 とりあえず、今この場所がどういうところなのか把握しておきたい。この人たちは『エリス』の家族なんだろうけれど、名前も知らない人たちだし、オレには『咲耶サクヤ』の記憶しかない。だからこそ、名前を知ることから始めよう。

「そうよ。私は母親のキャサリン。ずっとエリスが目覚めるのを待っていたの」

 金髪でピンク色の瞳をしている女性がキャサリンさん。こんなに美しい女性がいるのか、と思わず見つめてしまう。

「父親のユーインだ。あの子は娘のシェリル。お茶を淹れてくれたのはメイドのポーラだ」

 ユーインさんは金色の短髪で、ブルーサファイアの瞳だ。イケメンと美女が結婚したのか……と考えながら、ちらりと金髪少女に視線を向けると、彼女は口をへの字に曲げた。シェリル、ね。やっぱり沙織のプレイしていた乙女ゲームの世界のように思えるな。

 そして、猫耳少女はポーラというのか。黒髪おかっぱで金色の瞳をしている。

「やっと目覚めたと思ったら、あたくしたちを忘れるなんて! なんてどんくさい弟なのかしら!」
「シェリル、言葉をつつしみなさい!」
「フン!」

 オレのこと嫌いなんだろうな、この子。――いや、ちょっと待て。今、この子なんて言った?

「え、待って、姉なの? 妹じゃなくて!?」
「なにをどう間違ったら、あたくしが妹になるのよ! あんたは双子の弟!」

 双子の姉弟だって――!? え、待って、待って! まさか本当に沙織が言っていたゲームの中だったりする? いやいや、まさか、そんなはず……。でも、この子結構辺りきついし、悪役令嬢ってのもうなずける。それに、オレの名前エリスだし。

 こうやって見れば金髪少女の顔はめっちゃ派手。イケメンの父親の遺伝子ばっちりって感じ。ブルーサファイアの瞳も同じだしさ。吊り目だから結構きつそうに見える。あれ、じゃあオレの顔はあのパッケージ画像よりも幼い感じになっているのだろうか。

「あのー、鏡ってありますか?」
「鏡? ポーラ、手鏡を」
「はい、旦那さま」

 猫耳少女――ポーラは手鏡をポケットから取り出した。女の人ってポケットに鏡を入れているもん? それとも、いつでも用意できるようにこの子が気遣っている?
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