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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?

転生!? ――6

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「どうぞ、坊ちゃん」
「ありがとうございます」

 手鏡で自分の顔を確認する。わー、金髪少女や猫耳少女ややたら綺麗な男女を見ていたからか、めっちゃ地味に見える。攻略キャラだろうに。ちょっと悲しい。ああ、でもパッケージ画像では結構なイケメンに育っていたから、オレもそのくらいには成長できるのかな……?

「なんというか、顔の系統がずいぶん違いますね」
「ああ、それは……」
「あんたがもらい子だからよ!」
「シェリル! 嘘を言わないの!」
「どうやらエリスは私の祖父に似たようでね……」

 隔世遺伝か。沙織が言っていたエリスの人生を思い出し、オレはひっそりとこのままゲームの内容を邪魔しないことを決意した。辺境地でのんびりと暮らしたい。

「ええと、じゃあ次はこの国のことを教えてください」
「あ、ああ。もちろんだよ」

 ユーインさんはこの国のことを説明してくれた。

 国の名前はユーシティー。ここはルトナーク領。この家は伯爵家。つまり、ここが領地らしい。とはいえ、そんなに裕福というわけではないらしい。オレが寝てた部屋、かなり絢爛豪華だった気がするんだけど。もしかして、『エリス』のため? とそこそこ複雑な気持ちになった。

「そして、この国の民は女神の祝福を受けている。祝福を受けると魔法が使えるようになるんだ」
「女神の祝福?」
「ああ。十歳の誕生日前後に受ける習わしだよ。教会で女神の祝福を受け、どの属性に適しているのかを調べる。エリスはずっと眠ったままだったから、まだ受けていないけどね」

 女神の祝福、ねぇ。魔法ってオレが想像している魔法で合っているのかな。火の球とか水の球とか空を飛べるとか?

「どんな魔法があるんですか?」
「基本的に四属性。火・風・水・土。変わったところでは光・闇。いろいろ応用は効くから、魔法書がたくさんあるよ。うちにもね」

 沙織が闇の力がどうのって言っていたのは、魔法のことだったのかな。きっと。――あれ、じゃあオレもそのうち女神の祝福を受けに行かないといけないのかも?

「なるほど。大体わかりました。ありがとうございます。……それと、たぶんこんなことを言うと困らせると思うんですけど……」
「なんだい、エリス?」
「――ごめんなさい。今のオレはあなたたちを家族と思えないのです。なので、名前で呼んでもいいですか?」

 オレの家族は日本にいた両親と妹だけだ。だけど、この人たちが(シェリルを除いて)心から心配していることがわかる。時間は掛かるだろうけれど、いつか家族として受け入れることが出来たのなら、そのときはちゃんと呼ぼう。

 案の定、キャサリンさんは泣き出してしまった。悲しませて申し訳ない。

「ちょっと、なにお母さまを泣かせているのよ!」
「いいのよ、シェリル。エリス、お母さまはがんばってあなたに母親だと認めさせるわ!」
「え、別にがんばらなくても……」
「父さまもがんばるよ!」

 ……なに、この展開? とキャサリンさんとユーインさんを交互に見る。すると、トントントン、と扉をノックする音が聞こえた。半泣きのユーインさんがこほんと咳払いをしてから、「入れ」と口にする。
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