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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?
転生!? ――4
しおりを挟むオレの言葉は、その場の空気を凍らせる結果になった。目の前の男性は信じられないとばかりに目を大きく開き、女性は泣き崩れた。金髪の少女が慌てたように女性に駆け寄り、慰めるように彼女にくっついていて、猫耳少女は身体を震わせて静かに泣いている。
誰かこの状況を説明してくれないか……?
「そんな、私たちのことがわからないのか、エリス!」
男性が悲痛そうに叫ぶ。眉を下げて小さくうなずくと、目の前の男性はとても悲しそうに表情を歪めた。
そこからは怒涛だった。男性はひょいとオレを抱き上げて、無言で歩き出す。彼が歩き出すと、全員が彼の後ろを歩く。カルガモのように。
広間っぽいところにつくと、ソファに座らされた。ふかふかのソファの座り心地はとても良い。オレの右側に男性、左側に女性が座り、反対側のソファに金髪少女が座りこちらをじろりと睨んできた。なんで睨まれているんだ、オレ。
女性がそっとオレの額に手を当てる。熱を測っているのだろう。自身の額に手を当てて、どこかホッとしたような表情を浮かべる女性は、額から手を離すと困ったように眉を下げた。
「本当に、わたくしたちがわからないの?」
その表情はとても悲しそうで、ずきりと胸が痛む。でも、肯定のうなずきをした。すると女性はそっとオレのことを抱きしめる。
「エリス……、母のことを忘れてしまったの……?」
悲しそうな声が聞こえた。……母親? え、この女性、母親なの? ってことは、右側に座っている男性は父親だったりするんだろうか。じゃあ、あの金髪少女とは兄妹だったりするのかな?
それにしても、さっきからエリスって呼ばれているから、沙織の言っていた乙女ゲームを思い出してしまうな。
「……最初から説明しないといけないね」
男性がぽんとオレの頭に手を置いて、それから語り始めた。
「ことの発端は三年前。エリスとシェリルが七歳の誕生日のときだった」
え、ちょっと待って。それだと今は十歳ってことになるのでは? 抱きついていた女性が離れたので、オレは自分の手を見てみる。十歳にしては小さいのでは? と男性を見る。目覚めた、って言っていたし、三年間も眠り続けていたってこと? どうやって生命維持していたんだろう。点滴もなかったしさ。
「ケーキを食べて倒れたんだ。エリスが食べたケーキには、毒が入っていた」
毒入りケーキを食べて三年も昏睡? 命を狙われることをしたのか?
「犯人はすでに逃亡していて、なんの毒かもわからず、その毒を特定し解毒剤が出来るまで、エリスの身体を七歳のまま眠らせることになった。先日、ついに解毒剤が出来てエリスに投与することが出来たのだが、その反動なのだろうか、記憶を、失ってしまうなんて……」
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