どうもラピダスは、北海道の千歳工場で北米向けの半導体を生産したいようだ。日本政府は3300億円に加えて、5兆円とも10兆円ともいわれる補助金を投入するにもかかわらず、日本向けの半導体をつくるのではなく、よその国の半導体をつくろうとしている。これには筆者は、到底納得することができない。なぜ、よその国の半導体をつくる企業に、巨額の国費を投じるのか。
TSMC熊本工場は、そもそも日本向けの半導体をあまりつくらないと思われるし、もしかしたらつくるものがないかもしれない。また、ラピダス北海道工場は、そもそも2nmをつくれるとは思えないが、よその国の半導体をつくろうと営業活動を行っている。一方、原発はどうだろう。原発の建設にも巨額の国費が使われる。しかし、その原発は完成したら、少なくとも40年間は稼働して、日本国民が使用する電力を生み続ける。例に挙げた柏崎原発は、1号機から7号機までの7つの原子炉があり、総出力で821万2千kWを発電することができる。
TSMC熊本工場は「100年に1度」、ラピダス北海道工場は「1000年に1度」といわれ、巨額の国費を投じるとともに、途轍(とてつ)もない金額の経済波及効果があると試算されている。ところが、これらの半導体工場は、日本向けの半導体をつくらないし、つくろうとしていない。この点が原発と大きく異なる点である。したがって、日本の国益に適わないような半導体工場に、巨額の国費を投じることは、断固として反対である。
(文=湯之上隆/微細加工研究所所長)
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