業界としては破格の給与が払われてきた点がボトルネックではありますが、人手不足の昨今、これだけの数の社員をまとまって雇用できる点もビジネス価値が高いです。さらにこれらの営業資産はトータルで見て、今後、モビリティビジネスが大きな変革期を迎えることを考慮すると、伊藤忠グループの自動車事業全体の戦略を変えていくための武器にもなりえます。
そうなると結局のところ、条件次第ということになるでしょう。創業家としては現在会社が抱えている訴訟リスクや巨額になると想定される補償をどれだけ一緒に手放すことができるかが交渉のポイントとなるでしょう。買収する側はできればそれらのリスクをなしに営業権譲渡に持っていきたいでしょうけれども、そのような買い手有利な条件が前面に出過ぎた場合はこれまで同様に今回も破談になる可能性は高いでしょう。
伊藤忠は、デューデリジェンス前の感触ではビッグモーターには事業再生価値が十分にあるという見立てがあったことが今回の動きの前提でしょうから、これらリスクに対して何らかの双方が呑める妥協点を見いだせるかどうかが今後の交渉の争点になるでしょう」