金融庁、行政処分で「ビッグモーターは会社じゃない」断罪…取締役会も行わず

 以上の内容より金融庁は、

<自己の収入を増やすあるいは高い給与水準を維持するという「動機」、利益拡大を過度に重視する経営姿勢により、利益を上げるためには不正も許容されるという誤った認識を「正当化」させかねないいびつな組織風土>

と断定。これに対しSNS上では、

<「お前は会社じゃない」から始まる処分>

<企業として機能してない>

<延々「お前のこういうとこが会社じゃない」が並べられたあとに漸く始まる「因みに保険業法違反はこれです」、しかも締めが「体制整備の知識リソースも無ければ体制整備の支援の当てもないし再建はもう無理すね」で、こんなキッツイ行政処分の理由なかなか見ないやつになってる>

<いくらなんでも顧問弁護士ぐらいはいたろうと思うんだけど、会社法ガン無視を容認していたのかしら>

などとさまざまな声が寄せられている。

 百年コンサルティング代表取締役の鈴木貴博氏はいう。

「損害保険代理店登録の取り消し理由はガバナンスの欠如と体制の未整備とされていますが、問題はその細部です。具体的には会社法で定められている取締役会が開催された事実が確認できない、会計監査も実施されていないといった、ひとかたまりの法令違反が指摘されています。また苦情対応コールセンターについて『利益を生まない』という理由で閉鎖したり、保険募集の管理・指導も同じ理由から実施していなかったとされます。これら『実施しない』『廃止する』といった判断はオーナー創業家が直接下していたことから、『ビッグモーターは会社の体をなしていないと国が結論づけた』と話題になっています。

 上場企業ではありえないこの状況が、なぜビッグモーターではまかり通っていたのかというと、非上場企業に対する会社法の限界が背景にあります。ビッグモーターは会社法上は大企業に区分されますが、非上場企業です。上場企業は外部株主の権利を適切に守る必要があることから、一番厳しいガバナンス体制の構築やその維持管理が求められます。

 一方で、ビッグモーターのような非上場企業についても法律上は上場企業に準じるガバナンス体制を組むことが求められます。しかし問題としては、法令が守られているかどうかのチェックまでは国の力が及ばない点です。上場企業と違い、数が無数といっていいほど多い非上場企業については、国は管理手法として形式合理主義を取らざるをえません。形式合理主義とは具体的には、書類と印鑑が揃っていればそれが実行されていると簡易的にみなす考え方です。

 ビッグモーターの場合、実際は開催されていなかった取締役会も形式的には開催されたという議事録が存在し、取締役の印鑑が捺印されていたはずです。社内規程でも取締役会以外に経営会議を設置するなどガバナンスについて明記してありますが、形式的にこれらの規程が整備されていただけで、実態を伴っていなかったのです。内部にいればこのような法令違反や社内規程の形骸化はすぐにわかることですが、監督官庁のような外部の人間には形式的な書類が揃っていても、その実態があるかどうかまでは把握することができません。

 税金の場合には中小企業でも定期的に税務署の税務調査が行われ、取引や経費の実態があるのかどうかがチェックされます。しかし、それ以外の行政では実態のチェックへの予算は不十分です。ビッグモーターの保険取り扱いの資格については、少なくともこれまで監督官庁の調査はできず、形式的に揃っている書類だけで判断がなされていたということに尽きます」 

伊藤忠による買収検討への影響

 一連の不祥事を通じてビッグモーターと損害保険会社の癒着も問題視されている。なかでも損害保険ジャパンは2004年から約20年にわたりビッグモーターにのべ43人もの出向者を送り続けており、昨年6月頃に損害保険会社各社がビッグモーターとの取引を停止するなかで損保ジャパンのみが取引を再開し保険契約シェアを拡大。東京海上や三井住友も複数人の社員を出向させていたことがわかっている。