ディズニーストアの英断「商品数8割減」の勝ち筋

ディズニーストアも、かつてはキッズ・ファミリー向けのSKUを1万点近く用意していました。とにかく購入点数を上げてもらうために、関連グッズをたくさん作ってSKUを多くする戦略を採ったのです。

ところが、これは明らかに多すぎでした。SKUを多くすると、広く浅く陳列することになり、売れ筋の商品ほどすぐに在庫切れを起こしてしまいます。お客様が欲しいと思っている商品ほどすぐになくなるわけですし、売れ筋以外の商品が売れ残りやすくなるのでまったく非効率的です。

一方、SKUを絞れば、お客様は自分の欲しい商品、売れ筋の商品を探しやすく、店側は狭く深く仕入れているわけですから、在庫切れを起こしにくくなります。

私がディズニーストアで働き始めてから、このSKUを絞る必要性に気づいて1万点から1500点にまで絞り込むことになりました。SKUを絞る必要性に気づいたのは、お客様への出口調査がきっかけでした。

お店の出口で、お客様にインタビューをしたわけです。しかし、「買った人」にしたのではなく、「買わなかった人」にしました。買った人が何を買ったのかはお店のほうで把握していますから、出口調査というのは買わなかった人にすることに意味があるのです。

そして、買わなかったお客様にどうして買わなかったのかを尋ねていくと、およそ半分ぐらいの方が「買いたい商品が見つからないから」と答えたのです。

商品数を8割削って、買い上げ率が20%に向上

当時は、あまり接客もしていなかったので、SKUが多いと商品すべてを均等に発注するため、売れ筋は早く在庫切れになり、売れ筋でない商品は大量に売れ残り、おまけにお客様は自分の欲しいものがどこにあるのかがわからないという状況に陥ってしまっていたのです。

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そこで、当時はかなり社内で反対を受けたのですが、1万点から1500点ほどまで、約8割の商品を削って、SKUを大幅に減らすことにしました。

それまでは、キッズ向けの商品とアパレルがメインだったのですが、アパレルはサイズをすべて置かないといけないのでスペースを取りますし、SKU自体を増やしてしまいます。ですので、子ども向けとアパレルを縮小し、代わりにYAF向けの雑貨を増やした上で、SKUを絞るようにしました。

「YAF」とは「ヤング・アダルト・フィメール」の略称で、「若い大人の女性」という意味です。つまり、20代の日本の大人の女性たちをコアターゲットにしたのです。

なお、日本のディズニーストアは、現在YAFをターゲットにした専門ストアを約40店舗展開しており、すべてにおいてYAFの女性が楽しめる空間作りがなされています。しかも、そのストアで販売されている商品の実に9割以上が日本のオリジナル商品なのです。結果的にこの改革と、(紙幅の都合でここでは詳述しませんが)接客の強化によって、買い上げ率が20%にまで上がるようになったのです。