ディズニーストアの英断「商品数8割減」の勝ち筋

それとは反対に、物販の世界では、100人のお客様が来店しても、その100人全員に何かを買ってもらえるとは限りません。私たちが日本のコンビニエンスストアの売上を分析したところ、来店した人のうち何かを購入してくれた人は50%を切っていました。

この来店した人に占める何かを購入してくれた人の比率を「買い上げ率」と呼びます。私は、物販ではこの買い上げ率が非常に重要だということを知り、なんとかして買い上げ率を向上させようと努めました。

買い上げ率を計算するには、まず、来店者数を正確にカウントする必要があります。

そこで、私たちは店舗入口の天井に数百万円もするトラフィック・カウンターを設置し、買い上げ率を把握できる環境を整えました。その当時、買い上げ率を調べるためにトラフィック・カウンターを設置していた企業は、ディズニーストアとギャップだけでした。もちろん、ともに外資系企業で、日本の企業は買い上げ率という概念そのものにまだ関心を持っていなかった時代です。

それでは、物販における買い上げ率は、だいたいどの程度なのかというと、ユニクロを例に挙げますと、1998年11月に出店されたユニクロ都心第1号だった原宿明治通りの店舗で約20%だったと思います。流行りに流行って、売れに売れているユニクロでも買い上げ率はその程度だったのです。

買い上げ率を1%上げると、売上が10%も上がる

買い上げ率について考える時に重要なのは、買い上げ率を1%上げると、売上が10%も上がることです。買い上げ率10%のお店が、11%に上がるということは、購入客が約1割増えるということですから、売上は約1割増になるということです。

たかが1%と侮ってはいけないのが、買い上げ率なのです。

私はディズニーストアで買い上げ率の重要性を知り、それを上げる努力を続けた結果、転職当初は10%だった買い上げ率を20%まで上げることに成功しました。

また、買い上げ点数も重要なファクターでした。外食産業の場合は、売上は「入店者数×単価」で計算すればよかったのですが、物販の世界では「入店者数×買い上げ率×単価」で導き出すことになります。これに加えて、そのお客様が1度の買い物で何点の商品を買ったかという「購入点数」が売上に影響するのです。

外食では、人間の胃袋には上限がありますので購入点数にはおのずと限界が設けられますが、物販の世界には購入点数の上限は基本的にありません。

つまり、1人のお客様にできるだけ多くの点数を買っていただければ売上もアップしていくことになります。

買い上げ率と購入点数の両方を上げるためには、適切なロケーションを見つけて入店者数を上げた上で、接客の質を向上する必要があります。

外食産業と物販業にはさまざまな違いがあるものの、ロケーションが大事ということに関しては共通していました。マクドナルドと同じく、ディズニーストアも1にロケーション、2にロケーション、3、4がなくて、5にロケーション。それくらいロケーションは売上を左右するのです。

商品を「広く浅く並べたほうが売れる」は間違い

そして、買い上げ率や購入点数と同じくらい重要なのがSKUです。SKUとはStock Keeping Unitの略称で「在庫管理の最小単位」のこと。もっとわかりやすくいえば、その企業が販売している商品点数のことです。

物販業に携わったことがある人なら、誰もが「広く浅く商品を並べたほうが売れるのか」、それとも「狭く深く商品を並べたほうが売れるのか」という問題について1度は考えたことがあるのではないでしょうか。

多くの物販業者は、「広く浅く並べたほうが売れるのでは?」と考えてしまいがちです。しかし、これは間違いです。