健康寿命を延ばす「無理しない思考法」

「何もかも面倒くさがる高齢者」に医師が伝えたいこと

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高齢者はすべてが面倒くさい

高齢者と言われる年齢になってくると、テレビや新聞を見ようと思っても、嫌な情報ばかりで疲れてしまい、向き合う気力がわかないときがあります。

そうして世の中への興味がうすれ、ニュースに触れることさえ面倒になってしまう、そんな人も少なくありません。
その一方で、仕事をリタイアするような年齢を迎えても、依然として精力的な人がいます。

仕事を継続している人も意外に多いもので、65歳から69歳の就業率が50.3%という調査結果もあります。
経済的な理由のため仕事をしなければならないという事情がある方もいるかもしれませんが、いずれにしてもリタイアする年齢になっても働いている人が半数以上もいるのはすごいことです。

私の大先輩にもそういう方がいます。その大先輩の医師は、60歳を過ぎても第一線で働くのをやめず、ようやく80歳を過ぎたあたりで「もういいよな」と言ってリタイアしました。
その言葉の意味は「いろいろ医者として仕事をしてきたし、人生も楽しんできたから、それほど長生きしなくていいよな」だったのでしょう。確かに、80歳過ぎまで仕事ができたので、十分に人生を楽しんだということなのだと思います。

仕事の重圧から解放されてから、この世界を去ることになるまでの間、多くの場合は60歳くらいから80歳くらいでしょうか、短くはないその期間をどう生きていくのか。
それは、働き続けるにしろ、引退して余生を送るにしろ、自分の人生をまとめあげる意味で、とても重要です。

体力だけでなく精神的にも衰えを感じがちなこの時期は、いろんな物事が面倒くさいと感じてしまい、生きることさえ前向きにとらえられなくなってしまうことがあるようです。
そうした時期とどう向き合うのがよいのかについて、今回は触れてみましょう。

目標がない

生きることが面倒くさくなってしまう原因の一つに、「目標がない」ということがあるかもしません。

仕事をリタイアしたあとの生活というのは、次第に1日にハリがなくなってきます。何かをいつまでにやらなければいけないということがないからです。

現役で仕事をしていたときはストレスのない生活を望んできたというのに、いざ仕事から解放されてまったくの自由になってみると、何か物足りなくなって毎日にハリがなくなってしまう。時間に追われていたときが、懐かしいとさえ思うほどです。

しかししばらくすると、そんな何もない生活にも慣れてしまうものです。仕事をしないと言っても、いろいろな雑用があり、なんとなく1日が終わっていくからです。

とはいえ、仕事をリタイアした患者さんを見ていると、目標のない生活にも慣れていき、それほど疑問を持たなくなっているようです。
目標というものは、あれば張り合いになるでしょうが、ないならないで慣れていくものなのです。

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プロフィール

米山公啓
米山公啓

1952年、山梨県生まれ。聖マリアンナ医科大学医学部卒業、医学博士。専門は脳神経内科。超音波を使った脳血流量の測定や、血圧変動からみた自律神経機能の評価などを研究。老人医療・認知症問題にも取り組む。聖マリアンナ医科大学第2内科助教授を1998年2月に退職後、執筆開始。現在も週に4日、東京都あきる野市にある米山医院で診療を続けているものの、年間10冊以上のペースで医療エッセイ、医学ミステリー、医学実用書、時代小説などを書き続け、現在までに300冊以上を上梓している。最新刊は『脳が老化した人に見えている世界』(アスコム)。
主なテレビ出演は「クローズアップ現代」「世界一受けたい授業」など。
世界中の大型客船に乗って、クルーズの取材を20年以上続けている。
NPO日本サプリメント評議会代表理事。日本老年医学会特別会員。推理作家協会会員。

著書

80歳でもほどよく幸せな人はこういうふうに考えている

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米山公啓 /
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