無理に長生きしても、介護を受けたり、寝たきりになったりするだけだから、長生きしたくない。
そう言う人は少なくありません。
しかし、ここで言う「寝たきり」というのはいったいどんな状況なのでしょうか。
じつは多くの人が、寝たきりという状態をあいまいにとらえていて、その実態を正しくわかっていないように感じます。
ひとまず、寝たきりのイメージをしっかりとらえてみましょう。
寝たきりついて考える前に、寿命について確認します。
2019年の日本の平均寿命は、男性81.41歳、女性87.45歳です。
この寿命とは別に、「健康寿命」というものもあります。これは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる状態」までの年齢を指しています。
簡単に言えば、健康寿命とは、自分一人で日常生活が送れる期間のことです。
逆に言うと、日常生活を送るにあたって少しでも不自由があれば健康ではないということになってしまうとも言えるのですが、ここではそのことは置いておきましょう。
さて、先ほど寿命の平均について触れましたが、健康寿命の平均についても調べてみましょう。
2019年の日本人の健康寿命は、男性72.68歳、女性75.38歳となっています。
ここで、平均寿命から健康寿命を引いてみるとわかることがあります。
それは、寿命で亡くなるまでの「不健康な状態で過ごさなくてはならない期間」です。
この期間がいったいどのくらいあるかというと、2010年から男女とも徐々に縮小傾向で、2019年では男性8.73年、女性12.06年となっています。およそ10年前後というわけです。
この不健康な10年間が、あたかも寝たきり期間のように思われており、メディアでもそのように扱われることが少なくありません。
では、実際の寝たきりとはどのような状態で、どの程度の期間なのでしょうか。
介護保険では、介護が必要なレベルに応じて、いくつか段階が存在しています。
多少の助けがいるとか、不自由はあるが自分で日常生活が過ごせるとか、その具合によって段階が分けられているのです。
寝たりきりの状態は、要介護5とされています。
これは一人で日常生活を営むことがほぼ不可能で、寝たまま起き上がることができず、意思疎通さえ困難な状態を指しています。
こうなってしまうと、多くの人が特別養護老人ホームや介護医療院などに入所となります。
ここで重要なのは、要介護5の人の平均余命は、男性は1.23年、女性は1.55年ということです。
先ほど不健康な期間は10年近くあると述べましたが、完全に寝たきりになってしまうと1年前後で亡くなります。つまり、寝たきりの期間は、平均寿命から見れば、決して長くないのです。