退職代行「モームリ」のアドトラックが街中を走っているのが目撃され、SNSを中心に話題になっている。しかも、そのアドトラックが流している音楽が、「バニラ」のそれに似ていることも関心を集める要因となっている。モームリを運営する株式会社アルバトロスの社長に話を聞くと、SNS上で話題となることも狙って、高い宣伝効果が出るように計算して広告を出していることがわかる。同社のしたたかな広告戦略を探ってみる。
『首都圏ネットワーク』(NHK総合)、『news zero』(日本テレビ系)などのニュース番組をはじめ、『Live News イット!』『めざまし8』(いずれもフジテレビ系)、『羽鳥慎一 モーニングショー』(テレビ朝日系)といった情報番組、ほかにもBS番組やローカルテレビ、YouTubeチャンネル、ラジオ番組、ウェブニュースなど、今年さまざまなメディアで紹介され、急速に知名度を高めている退職代行サービス「モームリ」。
また、電車の吊り革広告を掲出したり、自社のSNSで情報を発信するなど、積極的な広告展開も行う。11月には、公式Xや公式YouTubeチャンネルにて、自社の社員が競合他社の退職代行サービスを利用して退職したことを明かし、インターネット上で大きな話題になった。そして今回、モームリのアドトラックが新宿や渋谷の街中を走行している様子が目撃され、SNS上に動画や写真が投稿されている。アドトラックを利用した狙いについて、モームリを運営する株式会社アルバトロス社長・谷本慎二氏に話を聞いた。
――モームリの広告が話題になることが多いですが、意図したものなのでしょうか。
「そうですね。退職代行サービスを始めたときから強い覚悟を決めて臨んでいるので、“攻める”くらいの広告戦略がいいのかなというスタンスで今までやってきました。その延長で今回のアドトラックを利用しました」(谷本氏)
――アドトラックがSNSで話題になっています。これも狙いの中にあったのでしょうか。
「SNSでの拡散は完全に狙っていました」(同)
――アドトラックが「バニラ」のアドトラックと似ているとの指摘もあり、ネガティブな印象を持たれる可能性を懸念する声もあります。
「バニラについてはリスペクトしています。社内の女性たちもバニラを知らない人はいません。風俗求人で女性がみんな知っているというのは、とても強い広告宣伝力があるのだと思いました。退職というのは働くすべての人に関係するもので、風俗に関しても9割の高い認知を得られるのであれば、退職について多くの人に一考してもらうきっかけになればと思い、アドトラックを利用しました。バニラに似せたわけではないのですが、低音が響く感じで、3つか4つのイメージを作詞家・作曲家の方に渡して作ってもらいました」(同)
――先日は御社の社員が競合他社の退職代行サービスを利用して退職した、ということを発信して話題になりました。ネガティブに捉えられかねないことも、あえて発信した意図はどこにあるのでしょうか。
「そもそも退職代行や退職の実情を世に広めるためには、良い意味でも悪い意味でもいろいろと発信し、多くの方に知ってもらい、それがSNSなどで拡散されることで関心が高まり、ブラック企業などに目が向けられ、労働環境の改善につながればいいなと思っています」(同)