ジェネリックは特許で守られない。先発品と比べて、メーカーの参入障壁は格段に低い。メーカー間で自由競争が繰り広げられ、価格は下がり、規模の経済が働くようになる。まさに世界のジェネリック業界で起こっていることだ。日本は異様だ。小規模のメーカーがやってこれたのは、厚労省が薬価を統制し、護送船団方式で守ってきたからだ。日本のジェネリックの価格は高い。降圧剤ノルバスクの場合、米国では先発品から97%値下げされたジェネリックが流通しているが、日本の場合、69%にすぎない。高脂血症治療薬リピトールの場合、米日の値下げ幅は97%と70%だ。
2007年以降、ジェネリックメーカーは『我が世の春』を謳歌してきたが、近年、状況は悪化している。それは、厚労省がジェネリックの価格の抑制に転じたからだ。ジェネリックは、市販されると最低薬価の一錠5.9円に達するまで一律に引き下げられる。この値段では、多くは赤字になる。流通しているジェネリックの約3割が赤字だ。ジェネリックメーカーは赤字の医薬品の販売を止めたいが、厚労省の方針で不採算を理由に撤退することは認められていない。この状況では、ジェネリックメーカーの経営は悪化を続けるしかない。
困り果てたジェネリックメーカーは、生き残りのために不正に手を染めた。製造手順を簡略化し、虚偽の記録を作成することでコストダウンをはかったのだ。ジェネリックの品質劣化が、やがて顕在化するだろう。国民の健康被害が生じるはずだ。どうすればいいだろう。低価格で、高品質のジェネリックを流通させるためには、国産にとらわれることなく、国際分業に協力すべきだ。つまり、外資系ジェネリックメーカーを受け入れるしかない。その際、問題となるのは、日本独自の規制だ。薬の包装や印字など、海外から見れば『オーバースペック』な要件を厚労省が求めている。
ジェネリック問題の本質は、厚労省の失政だ。彼らが当事者意識を持ち、動かなければならない。ジェネリックメーカーを批判しても、事態は改善しない」
(文=Business Journal編集部、協力=上昌広/医師、医療ガバナンス研究所理事長)