後発薬(ジェネリック医薬品)メーカーの相次ぐ不正の影響もあり薬不足が深刻化するなか、製造されている後発薬のうちの4割超で製造販売承認書と異なる製造が行われていることがわかった。医薬品を扱う全172社による自主点検の結果、8734品目中3796品目で製造販売承認書と異なる製造が行われていると判明。日本製薬団体連合会(日薬連)が厚生労働省に報告した。後発薬をめぐっては、以前からその効能・安全性を疑問視する指摘も出ているが、効能は先発医薬品と同様と考えてよいのか。また、厚労省は医療費抑制策の一環として後発薬の普及を推進しているが、この政府の方針に問題はないのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
後発薬メーカーの不正が相次ぎ、業界全体への信頼が揺らいでいる。2020年、小林化工の経口抗菌剤(水虫薬)「イトラコナゾール錠」に睡眠導入剤の成分が混入し、服用者に意識消失や記憶喪失などの健康被害が起きていたことが判明。福井県から116日間の業務停止処分を受けた。それまで業界最大手だった日医工は21年、10年間にわたり出荷検査で不合格となった錠剤を砕いて再加工したり、再検査して出荷していたことが発覚。75品目を自主回収し、富山県から32日間の業務停止命令の処分を受け、経営悪化に伴い22年に事業再生ADRを申請し、事実上破綻。企業再生ファンドの傘下に入った。昨年には業界最大手の沢井製薬が、胃炎・胃潰瘍治療薬「テプレノンカプセル50mg『サワイ』」の品質確認検査で約8年にわたり不正を行っていたことが発覚。承認を受けた手順とは異なり、カプセルから内容物を取り出して別の新しいカプセルに詰め替えた検体で溶出試験を行い、合否判定を行っていた。不適切な試験方法は社内の担当者の間で長年にわたり伝承されていたという。
現在、後発医薬品の使用割合(全国平均)は8割を超えており、一連の不祥事による各社の生産停止などによって薬不足が深刻化している。
日薬連によれば、今回の一斉点検では製造販売承認書と異なる製造が行われている医薬品のなかで品質に問題がある品目は見つからなかったとしているが、以前から後発薬の効能は先発医薬品とは異なるという指摘も一部ではなされてきた。薬剤師はいう。
「ジェネリックのメーカーの人のなかにも『ジェネリックは効かないから自分はできるだけ使わない』『製造がいい加減だから使わないほうがいい』という人はいます。ただ、個人的には、やはり価格は安いですし、まったく効かないということはないでしょうから、個人の判断で使うというのは構わないと思っています」
国は医療費抑制策の一環として後発薬の普及を進めている。10月からは、処方箋薬において後発薬がある先発医薬品を希望した場合は、一定の基準を満たす先発薬では後発薬との差額の4分の1が保険適用されなくなり、その分が自費負担となる。事実上の値上げと受け取られているが、厚労省は2029年度末までに後発薬の普及を金額ベースで65%以上、数量ベースで80%以上(全都道府県)とする目標を掲げている。この国の方針は正しいのか。
医師で特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長、上昌広氏はいう。
「ジェネリックメーカーの不正が相次いでいる。現時点で流通しているジェネリックの大部分は問題ないのだろうが、多くの国民がジェネリックに不信感を抱いているだろう。なぜ、こんなことになってしまったのだろう。私は、最大の問題は厚労省の『護送船団方式』と考えている。日本のジェネリックメーカーの特徴は、規模が小さいことだ。大手の東和薬品、サワイグループHDの2023年度の売上は、2279億円、1769億円だ。サンド(スイス、96億ドル)やテバ(イスラエル、87億ドル)の足元にも及ばない。我が国では、医療費を抑制したい政府が2007年6月に『経済財政改革の基本方針2007』のなかにジェネリックの数値目標値を盛り込み、普及を後押しした。同年度の東和薬品、沢井製薬の売上は315億円、376億円にすぎず、16年間で7.2倍、4.7倍に売上を伸ばしたが、いまだにこの状況だ。