東京女子医大、入試で寄付金額を点数化、堂々と入試不正…学費は計4千万円

 結局、同学は賞与を支払うことに決め、看護師の一斉退職が免れたものの、21年には約100人の医師が退職するという事態が発生(同学附属の3病院合計)。背景には大幅な給与カットがあった。

 経営悪化を受け、21年度入学から学費を年間200万円、6年間で計1200万円値上げしたことは大きなニュースとなった。

 さらに東京女子医大のブランドを傷つける事態が発生。一部の卒業生らが23年3月、岩本理事長を背任容疑で刑事告発し、これを受け警視庁は、岩本理事長が昨年4月まで代表理事会長を務めていた同学の同窓会組織である一般社団法人・至誠会に特別背任の容疑があるとして、同学本部などへの家宅捜索を実施した。

 3月30日付日本経済新聞によれば、至誠会の元職員は同学の経営統括部に勤務していた20年5月~22年6月に約3300万円の給与を受け取っており、20年5月~22年3月に至誠会側からも勤務実態がなかったにもかかわらず約2000万円の給与を得ていた疑いがある。同学の経営統括部は岩本理事長が理事を務めていた。大学と至誠会の発注工事を巡っては、また、元職員が関係していた会社に対し、同学と至誠会が発注した工事の元請け業者から1億円あまりが流れていた疑いも持たれている。

 前出・石渡氏は3月30日付当サイト記事で以下のように指摘していた。

「破綻までは行かなくても、後述の他大学による買収はあり得ます。と、いいますか、東京女子医大単独での生き残りは極めて難しい状況にあります。同学はもともと高い医療技術で評価されていました。しかし、01年に人工心肺事故、14年に全身麻酔剤の過剰投与事故、抗がん剤の過剰投与事故(判明は16年)などが起き、医療機関としての信頼が失われています。さらに大学病院としては他大学の5~7割程度という低い給与体系から、21年には医師が100人以上、退職しています。

 ところが、岩本理事長は創業者一族というだけで要職を歴任し、14年には副理事長、19年には理事長に就任します。岩本理事長が経営を立て直したとはいいがたく、不透明な資金の流れなどが22年から一部週刊誌でも報道されていました。22年度事業報告書によると、経常収支差額がマイナス97.2億円。入院患者数(延べ)は12年度に67.8万人(附属病院を含む)だったものが22年度は43.8万人と減少しています。

 医科大学は通例、医学部は赤字でも病院事業で利益を出し、学校法人全体では黒字にもっていくのが一般的です。それが入院患者数が減っており、それだけ大学の信頼が失われていることが影響しています。しかも、今回の背任事件によりガバナンス欠如が明らかとなってしまいました。こうなると、同学の独力による再建は期待できません。資金力のある学校法人が買収したうえでの再建が基本線となるのではないでしょうか。戦後、医学部のある大学の経営破綻は起きていません。仮に経営破綻となった場合、日本の医療の信頼が損なわれることになります。これを回避すべく、他大学の買収による経営再建が基本線となるでしょう」

(文=Business Journal編集部、協力=石渡嶺司/大学ジャーナリスト)