日銀が国債買い入れの減額方針を決め、今後は「量的引き締め」の局面に入る。約600兆円に上る日銀の保有国債を減らして適正な水準に戻すまでの道のりは長く、経済にダメージを与えないよう綱渡りの政策運営が続く。円安進行で輸入インフレ再燃の懸念が強まる中、次の焦点は追加利上げの時期。ただ、消費は足踏みが続いており、日銀は難しい判断を迫られる。
「減額する以上、相応の規模になる」。植田和男日銀総裁は14日の記者会見で、7月の会合で具体策を決める国債買い入れの見直しは、ある程度の縮小幅になると説明した。
日銀は3月の政策変更後も、長期金利の急上昇など市場の動揺を防ぐため、月間6兆円規模の国債買い入れを継続してきた。しかし、その後の急激な円安進行もあり、4月の前回会合から減額について議論を始めていた。
日銀内では「国債保有残高の正常化には10年以上かかる」との見方もある。3月にマイナス金利を抜け出し「金利のある世界」に復帰したが、今後、日銀が目指す適正な国債の保有規模は手探り状態だ。
日銀に代わる国債の買い手が現れなければ、需給が悪化し、長期金利が上昇するリスクもある。過度の金利上昇は、固定型の新規住宅ローン金利の引き上げなどを通じ、景気に悪影響をもたらす恐れも否定できない。
一方、金融市場では、追加利上げのタイミングに注目が集まっている。しかし、物価高に賃金上昇が追い付かず、個人消費の低迷が続いているほか、トヨタ自動車などでも認証試験の不正が発覚。景気の持ち直しに冷や水を浴びせた。
植田総裁は14日の会見で、基調的な物価が2%目標を実現する見通しに沿って進めば、「政策金利を引き上げる」との考えを示した。市場では、「早ければ7月の利上げもあり得る」(国内証券)との見方も少なくない。景気の先行きに不透明感が漂う一方、物価の上昇圧力は根強く、日銀の政策運営は難所を迎えている。 (了)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/06/14-19:46)