マイクロソフト、1年目社員に報酬3億円、くら寿司は1千万円…高額報酬広がる

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くら寿司のHPより

 米マイクロソフト社の「給与ガイドライン」とされる文書の内容が米メディア「Insider」によって報じられ、入社した初年度の報酬が最大で3億8000万円となるケースも想定されていることが話題となった。この金額は基本給に加え、入社時の一時金や年次株式報酬などの、さまざまなボーナスが加算されたものだが、それでも驚くほどの高額報酬だ。外資系企業などにおいて初年度の年俸が数千万円となる求人は珍しくないが、最近では三菱UFJ銀行が高度なIT知識を持つ大学新卒に対して年給与1000万円を保証するなど、高額な報酬を掲げる日本企業も増えてきている。企業が初年度から高額報酬を提示して求人する意図はどこにあるのか。また、日本でもこのようなケースは増えていくのか。株式会社人材研究所・シニアコンサルタントの安藤健氏に聞いた。

「この3億8000万円という数字は、そこまでは報酬を出せるという仕組みの話なので、本当に該当する人物がいるのかというのは別の問題だとは思います。ただ、このレベルの高額提示をしてでも良い人材を確保したいという企業は実際にありますし、年俸数千万円クラスの求人は、ここ数年で増加していると思います」(安藤氏)

 転職などの中途採用だけでなく、新卒採用においても高額報酬を掲げる求人は増えているという。

「高額報酬になる人材というのは、市場価値が高いということになります。就職市場における価値は、需要の高さ×その職種人口の少なさで決まります。代表的なのは、AIエンジニアやデータサイエンティストと呼ばれる高度IT人材。これに該当するような人は、そもそも職業人口全体に占める割合がものすごく少ないです。例えば、アクチュアリーと呼ばれる、保険業界などで数理を扱う職種に就ける人材は日本で1000人ぐらいしか存在しない。先ほどの市場価値の公式に当てはめると、まさに希少性が高くて需要もあるので、新卒でも年俸1000万円以上となる求人はざらにあります」(同)

 こうした希少で即戦力となる人材を獲得するために、特に外資系は高額な報酬を提示する傾向がある。

「外資系企業で報酬が高額となるのは専門性の高い、ジョブ型求人が多いです。ただし、契約内容はシビアで、短期間で成果を上げる必要があるなど、ドラスティックに評価されてしまいがちです。また、正社員としての雇用ではないことも多いので、その場合、すぐ解雇されてしまう可能性もある。企業側からしてみれば、成果報酬型の契約に近いので、高額の給与を払って雇用してもリスクを取れるという事情があるわけです」(同)

 対して、日本企業は総合職として雇用することが多いため、突出した高額報酬を提示できない場合が多かった。

「一般的な日本の企業は、新卒を総合職のような形で採用して、数年かけてさまざまな部署で経験を積ませていいきます。1つの職種の専門性を高めていくのではなく、その人材の社内での価値をあげていくというシステムです。そうすると、給料も最初は低く抑えて、勤続年数に応じて徐々に増やしていくという形になります。ただし、正社員雇用だと解雇規制も厳しくなるので、すぐにレイオフされないという利点もあります」(同)

飲食業界や小売業界でも高額報酬が拡大

 近年では専門的な知識を持っていたり、幹部候補生などの高度な人材に対して高額な報酬を支払うのは当然という認識も以前より広がってきている。

「日本企業は年功序列型が多く、勤続年数と役職によって給料があがっていくのが一般的です。そこに初年度で年収1000万円の人がポンと入ると、整合性が取れなくなってしまう。そこで、特別待遇人材だけを集めた子会社を作るというケースも増えています。会社を分ければ人事制度も変えられますから」(同)