このような制度や意識の改革もあり、初年度から高額報酬を提示して求人する国内企業は増えてきている。
「金融やIT業界は、そもそも平均年収が高いので初年度での高額報酬はありえると思いますが、最近では飲食業界や小売業界のような、平均年収が他の業界よりも比較的低い企業でも新卒に対して高額報酬を提示するようになってきています。例えば、『くら寿司』が、2020年度の新卒採用で年収1000万の幹部候補生を募集しました。他にも、スーパーマーケットを運営する企業で初年度年収1000万という求人も出てきています」(同)
さまざまな業界で高額報酬が増えているのは、企業の人材獲得に対する危機感の表れだという。
「労働市場、採用市場もグローバル化が進み、国内だけでなく、外国企業とも獲得競争が激しくなっています。いわゆる『war for talent』と呼ばれる、才能のある者を獲得するための戦争が、日本企業間においても勃発している。アメリカのボストンで開かれる『ボストンキャリアフォーラム』という日英バイリンガル人材を主とした就職イベントがあるんですが、以前は外資系の金融や国際系企業ばかりでした。しかし、最近では日本の飲食チェーンやリテール系企業の参加も増えており、グローバル化に対応した人材を獲得しようという傾向がみられます」(同)
世界的に有能な人材の取り合いが激しくなっていることが、高額報酬の背景にある。
「日本は少子高齢化で生産労働人口が減り、新しく労働市場に入ってくる若い人たちがどんどん少なくなってきています。一方で、技術革新の進化が早く、最先端の高度なスキルを持った、即戦力になる人材が求められている。グローバル化する市場のなかで日本企業が生き残っていくためにも、このような高額報酬を掲げた募集は増えていくと思います」(同)
(文=清談社、協力=安藤健/人材研究所シニアコンサルタント)