400円の低評価のワインがコンクール金賞受賞…「高いワインは高品質」幻想か

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写真/Getty Imagesより

 ワイン選びにおいて、参考のひとつになるのがボトルに貼られた「コンクール受賞」のステッカー。消費者は品質が高いのだろうと期待して購入するわけだが、世の中には「お金稼ぎだけを目的にしたワインコンクールもある」という噂があるようだ。ベルギーの公共放送局「RTBF」がその噂を検証するため、有名ソムリエが「まずい」と酷評した約400円の安ワインのラベルを貼り替えて国際コンクールに出品したところ、金賞を受賞してしまったことが話題になった。

 同局は今年5月、ベルギーの著名ソムリエの協力の下、3ユーロ(約470円)以下のワインの中から「最もまずいワイン」を選出。大手スーパーで販売されていた約400円のワインが選ばれ、ラベルを「ル・シャトー・コロンビエ」という高級そうな架空の銘柄に貼り替えたうえで、国際ワインコンクール「ジルベール&ガイヤール・インターナショナルチャレンジ」に出品。出品は参加費約50ユーロ(約8000円)を払ってワインを発送するだけでよく、事前にアルコール度数などを専門機関で検査する必要があるとされているものの、同局は適当な数字を記入するだけで問題なくパスできたとしている。

 結果は「金賞」となり、審査員からは「優しく、繊細で深いテイストで、きれいな若い香りがあり、豊かな味わいを約束します」というコメントがあったとのこと。コンクールの公式サイトにも金賞受賞を示すページが用意され、同局は「金賞のステッカー1000枚を60ユーロ(約9500円)で購入するはめになった」「ブリュッセル国際コンクールのようにしっかり役割を果たしているコンクールもあるが、輝くものすべてが金というわけではない」という顛末を報告している。

 日本を含めて世界中に数多くのワインコンクールがあるが、このような検証結果があるとワインのラベルに貼られた受賞ステッカーの信憑性まで怪しく思えてくる。実際、消費者側としてはワインコンクールをどれほど信用していいものなのか。「20世紀最高の料理人」と称されるジョエル・ロブション氏の下でシェフソムリエとして14年間仕えた、日本を代表するトップソムリエの信国武洋氏はこう語る。

「ワインのコンクールの信憑性に関しては千差万別で、ばらつきの要因には審査員の質が関係しています。たとえば、日本のコンクールだと審査員は日本独自のワインの資格を持っている人がいますが、そうした資格はペーパーテストと多少のテイスティングをしたら取得できるものがあります。ワインに日常的に携わっていない人が審査員をやっていることも多い。話題性のある著名なコンクールでも、ほぼアマチュアの審査員を集めていることがあり、そうなると品評会というより個人的な好き嫌いによる多数決のようになってしまいます。

そのような審査員ばかりのコンクールの場合、今回話題になったベルギーでの検証のように、高級そうなラベルが貼ってあったら『審査員が先入観で品質が高いと思い込み、金賞に選んでしまう』といったことは起こり得ます。もちろん、日本でも『インターナショナル・ワイン・チャレンジ』のように歴史があり、長年ワインに携わっているプロを審査員にそろえた、公平性と信頼性の高いコンクールはあります。また、コンクールでも銘柄を伏せたブラインドテイスティングによる審査の場合は、ラベルによる先入観でおいしいと思い込んでしまうようなことはないでしょう」(信国氏)

 検証では「お金儲けのためのコンクールなのでは?」という疑問が提示されていたが、信国氏によると「お金目的だけのコンクールはあったとしても続かない」とのことで、単に審査員のレベルが低かったがゆえの「400円ワインで金賞」という結果だった可能性もあるようだ。