以上を前提としたうえで、現場での人の動きを考えるべきです。カフェ・ベローチェの場合、各スタッフの頭の中におけるストーリー作りが素晴らしいのだと思います。『今、こういう状況だから、次にはこうなるはずで、そのためにはこれをやっておこう』という、先の読みから今やるべきことを前倒しで行う『先読み能力』に長けているのでしょう。そのような店員が多いほど、商品の提供やバッシングも早く、お客さんのストレスは減り、店の回転率が上がります。
また、店員の空間把握能力もオペレーションにおいては重要な要素です。これは、お客さんの状況を冷静に把握する力、周りのスタッフが何をしていて自分が何をすべきか理解し行動する力です。よく飲食店で、お客さんが箸を落とすと、ささっとやってきて箸を取り換えてくれるスタッフがいますが、こういうスタッフは自分の周辺にレーダーをはったゾーン(大きな円)をつくっており、そのなかで起きたことを把握し体を動かします。その円が大きいか小さいかが、各スタッフの空間把握能力の違いとなります。その違いが、優秀なスタッフとぼ~っとしているスタッフの分かれ目です。先読み能力や空間把握能力に長けたスタッフは、お客さんとコミュニケーションを取っていいタイミングかそうでないタイミングかも判断できるので、お客さんが感じるサービスやホスピタリティも向上します」
では、店舗のオペレーションの良しあしは、その店の業績・経営を大きく左右するものなのか。
「もちろん大きく左右するので、飲食店では店員に対して各種研修や現場での指導を行っています。カフェ・ベローチェ以外ではスターバックスコーヒーは付加価値を重視するサービス・ホスピタリティで有名ですが、スムーズなオペレーションが前提にあってのことでしょう。また、キッチンのオペレーションをベースに総合的なオペレーションの向上を実現しているのがサイゼリヤです。
オペレーションをスムーズにこなすには、慣れと個々の能力・適性も影響してくるので、どうしても経験差や個人差が出てしまいます。そのためお店としては、研修だけでなく、店員に経験を積ませ、現場で都度指導するやり方で個々のレベルアップを目指すほかありません。今回のベローチェの例は、これらの能力に長けた店長たちが集まることで、かなり効率的なオペレーションが実現できた結果といえるでしょう」
(文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表)