国土交通省は、自動車保険の保険金水増し請求問題をめぐり中古車販売大手ビッグモーターを道路運送車両法に基づき調査中だが、ビッグモーターの不正を容認していたとされる損害保険ジャパンが販売する同省職員向け団体保険において、最大で40%にもおよぶ保険料割引を受けていたことがわかった。国交省は直接的に損保ジャパンを監督する立場にはないが、損害保険会社は自動車保険の取り扱いを通じて自動車業界と深い利害関係を有しており、自動車業界を監督する国交省として問題はなかったのが問われている。
昨年に不正が発覚して以降、沈黙を守っていたビッグモーター経営陣は先月25日、騒動後初となる会見を実施。それから1カ月が経過しようとしているが、同社内で行われていた不正行為に関する報道はあとを絶たない。
たとえば、車の購入者が代金の約100万円を現金で支払おうとしたところ、店舗の営業担当者から総支払額は変わらないので1年だけローンを組むよう説得され、結果的に120万円を支払う羽目になったり、新品タイヤなど30万円相当のオプションを無償で付けるのでローンを組むよう言われた客が、約束を反故にされオプション分を有償で契約させられたケースがあったという(11日付「AUTOCAR JAPAN」記事より)。
また、ビッグモーターに車を売却して3カ月が経過しても名義変更の知らせが来ず、使用者も保管場所も変更されていなかったり、売却した車について冠水した過去はないにもかかわらず、冠水した跡があるとして突然700万円の賠償請求訴訟を起こされたり、店舗で売却のキャンセルを告げると店長から罵声を浴びせられるようなケースもあったという(11日付「弁護士ドットコムニュース」記事より)。このほか、中古車の一括査定サイトでは、登録した顧客のメールアドレスや電話番号などを入手し、その顧客になりすまして勝手に登録を解除する一方で顧客に接触し、他の中古車買取業者との価格競争を回避する「他社切り」という信じがたい行為まで横行していたという(9日付「FNN」記事より)。
そんなビッグモーターと深い関係にあったのが損保ジャパンだ。ビッグモーターの店舗を通じて年間数十億円の自動車保険の収益を上げていたとされる損保ジャパンは、不正を行っていたビッグモーターの板金部門(自動車修理部門)などに2011年から計37人に上る出向者を送り込んでいた。昨年の不正発覚を受けて三井住友海上保険と東京海上日動火災保険がビッグモーターの修理工場への、自動車事故を起こした保険契約者の仲介を停止していたなか、損保ジャパンのみが再開し、それによってビッグモーターを窓口とする自社の自動車保険の契約数を増加。すでに金融庁は損保ジャパンに対して行政処分の発令も視野に調査に乗り出しているが、4日発売の週刊誌「フライデー」(講談社)によれば、損保ジャパン社員がビッグモーターの板金部門に対して、損保会社に保険金を水増し請求するために修理車両の傷を深く見せる方法を指南していたという。
その国交省が職員向けの損保ジャパンの団体保険について、保険料の40%値引きという待遇を受けているというのだ。そもそも団体保険とはどのような保険なのか。保険ジャーナリスト協会代表の鬼塚眞子氏はいう。
「団体保険(団体契約)とは、日本損害保険協会のHPで解説されているように、一定の要件を満たした企業や団体が契約者、従業員や社員が被保険者(保険の対象となる人)として契約する保険をいう。団体契約の最大のメリットは、契約人数に応じた保険料の割引の適用があることだ。団体契約の保険料は、その企業や団体の加入人数、職業危険率などの属性、予想される事故率から算出される。すべての保険商品は金融庁に申請し、認可してもらわなければ発売することはできない。30~40%割引というのは、目を見張る数字かもしれないが、決して突出して優遇している数字ではない。国交省の職員の事故率が低く、複合的に考察した上で算出された割引率だと捉えている。