現在の売上減少からFFシリーズの衰退だという声も聞かれる。20年11月に発売され、現時点で累計出荷本数400万本超えの「桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~」の10分の1以下の販売本数であるという指摘もある。発売初週のFF16と発売から3年弱の桃鉄の販売本数を単純比較することはできないものの、その差に衝撃を受ける人々がいてもおかしくはない。
「たしかに桃鉄のほうが売れたのは事実ですが、だからといってFFシリーズの売上と比較するのはお門違いです。桃鉄は今や国内の普及台数が2500万台を超えるNintendo Switchのソフトとなっています。一方、FF16対応のPS5は、今年の3月初めにやっと300万台を超えたばかりなので、そもそものユーザー数が段違い。そう考えると、桃鉄とFF16の売上にここまで差が出るのは当たり前なんです。
また桃鉄は売上が業界の予想をはるかに超え、ミラクルを起こしたモンスタータイトルであったことも踏まえなくてはいけません。というのも、ゲーム業界ではハード普及数に対しソフトの売上が10%を超えれば成功といわれます。ちなみにFF16はPS5の普及台数300万台に対し、初週だけで国内で30万本以上販売され10%を超えたので、充分成功といえます。
桃鉄の場合、Switchの普及台数2500万台に対し400万本、16%であり、異常ともいえる数字。桃鉄がここまで売れたのは、単純にコロナ禍に入り巣ごもり需要が発生したこと、その影響でオンラインに触れる機会が増加したことが挙げられるでしょう、いずれにせよ、桃鉄が外出制限下の状況を背景にした規格外のヒットであったことは忘れてはいけません」(同)
FF16もまずまずの出だしを切ったといえるということか。
「FFシリーズは、すでに36年の歴史を持つ長寿タイトルになっているため、新作が出るたびにシリーズの伝統と最新技術の融合が期待され、開発側はかなり四苦八苦している印象があります。ですが、海外市場の売上がよいことを踏まえると、まだまだ健闘しているタイトルだといえるでしょう」(同)
ゲームの性質上、需要のほとんどが日本国内である桃鉄は3年間で400万本。対してFF16は全世界をマーケットにした作品であり、初週だけで300万本突破している。国内だけで見れば桃鉄のほうがユーザーは多いのだろうが、全世界で見ればFF16に軍配が上がるだろう。しかし、FF8以降の国内売上は右肩下がりであるというのもまた事実。「ドラゴンクエスト」シリーズと並び、日本を代表する2大RPGであるFFシリーズが、国内でもまた圧倒的な輝きを取り戻す日は来るのだろうか。
(取材・文=A4studio、協力=岩崎啓眞/ゲームプロデューサー、ゲームライター)