FF16・大コケ論は正しいのか…前作から半減、スクエニはPS5販売台数を理由に

 一方、肝心の販売本数に関しては、ユーザーによって評価が分かれている印象だ。ゲーム専門誌「ファミ通」によれば、発売初週の累計販売本数は全世界で300万本を突破、国内でも33万6027本を記録し、好調の出だしを飾ったと評価する声も少なくない。だが2016年11月発売の前作FF15の初週累計販売本数と比べてみると、FF15は全世界で500万本突破、国内で69万4000本(4Gamer.net調べ)となっており、FF16は大きく数字を落とす結果になったと嘆く声もある。

 さらに遡るなら、FF14はオンラインゲームのためFF13を参考に見てみると、2009年12月発売のFF13の初週の国内推定販売本数は151万6532本(エンターブレイン調べ)。国内だけで比較すると、FF16の初週はFF13の4分の1以下しか売れていないということになる。最新作の反響を受けて、国内屈指のキラータイトルであるFFシリーズの行く末はどうなっていくのか。今回は、ゲームプロデューサーの岩崎啓眞氏に、FF16の反響について解説してもらった。

ストーリーやシステム面は高評価、だが売上は減少傾向

 まずFF16に対する評価について。

「結論を申し上げるのであれば、十分に成功といえるクオリティに仕上がったといえるでしょう。FF16はこれまでのシリーズで当たり前だったコマンドバトル要素を大胆に廃止し、アクション面に舵を振り切っており、チャレンジングな作品として新しいFFらしさを感じさせる一作に仕上がったと思います。そして、それ以上にシナリオの出来もよく、アクション要素を楽しむとともに、ストーリーをしっかりと味わうことに重点を置いてほしい、という製作陣の意図を読み取れますね。

 前作FF15は、オープンワールド(移動制限がない広大なフィールドを楽しめるゲーム)を盛り込んだ意欲作だったのですが、かえってこの要素がシナリオとの不和を生じさせてしまい、ゲーム体験としては中途半端なものとなってしまいました。その後も追加コンテンツが突如中止になるなどの発表もあり、決してクオリティが低いワケではないものの、非常に惜しい作品になってしまった、というのがFF15への印象です。FF16はそんなFF15の反省点を活かし、シナリオを十分に楽しんでもらえる作品へと仕上げることができたのかもしれません」(岩崎氏)

 やはりゲーム自体の評価は高いFF16。一方でその売上について、海外は好調だというが、国内に限っていえば、かつてほどの売れ行きはない。

「1999年に発売された『FF8』以降、国内の売上は基本的に右肩下がりです。その原因はいくつか存在するといえます。1つは、ハードの所有状況が変化したこと。1997年発売の『FF7』以降のFFシリーズは、基本的にPS(プレイステーション)シリーズ対応のソフトとなっており、初代PS、PS2の時代はハードの所有率も高かったので、ミリオンヒットを出すことも珍しくはありませんでした。ですがPS4、PS5の時代は競合である任天堂ハードのシェアが圧倒的に高くなっており、PSは比較的コアなゲーマーしか所有しないハードへと変化してしまったんです。もともとのハードの所有数が少なくなると、ソフトの売れ行きが下がるのも当然のことであり、事実PS4対応の『FF15』、PS5対応の『FF16』は本数だけで考えれば、大幅に下がってしまいました。

 もう1つは、先述した『FF7』の影響もあります。当時、FF7は国内外で爆発的なヒットを記録し、ゲームの歴史を塗り替えた作品として、その地位を不動のものにしました。ムービーを織り交ぜながらドラマティックに描かれるストーリーに、当時のプレイヤーは興奮し、のちの作品にも多大な影響を与えました。見方を変えれば、FF7はゲームのあり方を根本から変えたゲームのひとつとなります。したがって、その後のFFナンバリングタイトルにかかるプレッシャーも大きく、結果としてFF7以上の興奮が得られなかったのも大きかったのではないでしょうか」(同)