SBI、非金融でも増す存在感…半導体工場建設や新生銀行買収、したたかな戦略

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SBIホールディングスのHPより

 現在、SBIホールディングス(以下、SBI)は、さまざまな分野で収益力の拡充に取り組んでいる。金融分野では、デジタル技術の積極的な活用を軸に、地銀との資本・業務提携を増やした。新生銀行も買収した。一方、国内外の非金融分野の企業との関係も強化している。7月、台湾の半導体受託製造企業(ファウンドリ)である力晶積成電子製造(パワーチップ、PSMC)と、半導体工場の建設に向けた基本合意を結んだ。世界的に半導体の重要性は高まっている。工場用地の取得や建設が進むに伴い、その地域を訪れる人の往来も増えるだろう。

 人の動線が復活すると、宿泊施設、交通、小売などの出店も増える。それに伴い、地域(地方)の経済は活性化し、資金需要も盛り上がるはずだ。そうした展開を実現することによってSBIは収益の得られる分野を拡大しようとしている。ただ、世界経済の先行きに不安定感は高まっている。SBIの成長戦略が奏功するか否か、見通しづらさは増している。経済、金融市場の悪化リスクにSBIがどう対応し、成長を実現するかが注目される。

地銀などとの提携・買収の強化

 近年、SBIは資本・業務提携を締結する地銀を増やした。主な提携先は、島根銀行、福島銀行、筑邦銀行、清水銀行、東和銀行、筑波銀行、きらやか銀行などだ。背景には、銀行業界の収益性低下が大きく影響している。伝統的に、日本では銀行が預金を集め、事業法人などに資金を融通する金融のあり方(間接金融)がメインだった。多くの銀行は、人通りの多い駅前などの一等地に店舗を構え、より多くの預金を獲得し、貸し出しを増やそうとした。高度経済成長期のように、経済全体が右肩上がりで成長し資金需要も旺盛な環境下、そのビジネスモデルはワークした。

 しかし、1990年はじめにバブルが崩壊して以降、日本では実質的なゼロ金利環境が続いている。長引く金融緩和によって国債の利回りは低下し、債券取引による収益獲得は難しくなった。企業は成長期待の高い分野に進出するよりも、今ある事業の継続を優先するようになった。人口の減少も深刻化し、経済全体で資金需要は低下した。

 そうした環境の変化に対応するために、SBIは地銀にシステムの共有などを呼びかけた。資金決済、口座の残高管理など、多くの銀行が必要とするシステムの基本的な要件は共通している。システムの共同利用を進めることによって、地銀はサーバーの設置、メンテナンスなどにかかるコストを削減できる。

 一方、モバイル決済の普及などによって、銀行が担った口座振替決済や信用審査などの機能は、ITなど非金融分野に急速に溶け出している。地方銀行がデジタル化の加速に対応するために、IT先端企業との関係を強化するSBIと連携する意義は高まった。提携する地銀との協業分野を拡大するためにSBIは証券化ビジネスなどが強い新生銀行も買収した。

 6月24日、SBIは新生銀行に対する株式公開買い付けの結果を公表し、保有比率は53.74%に上昇した。SBIの発表資料によると、新生銀行は上場廃止になる見込みだ。その後、公的資金返済が目指される。それによってSBIは国内の金融業界で「セミメガバンク」というべき地位を確立し、金融仲介機能を強化しようとしている。

資金需要の創出に向けた企業との連携

 また、SBIは、国内外の非金融分野の企業と関係を強化している。7月5日、同社は台湾の半導体ファウンドリ世界大手、PSMCとの基本合意を発表した。日本でSBIとPSMCは半導体工場の建設に向けた準備を進める。そうすることによって、SBIは資金の需要を増やそうとしている。