スマートフォン用ゲームソフト市場における中国のゲームメーカー・miHoYo(ミホヨ)の躍進が凄まじい。同社が2020年にサービス開始したオープンワールドRPG『原神』は、美麗なグラフィックと没入感の高い広大な世界、魅力的なキャラクターとゲーム性が話題を呼び、リリース当初からヒットを記録。米調査会社センサータワーによれば、「原神」モバイル版の総売上高は40億ドル、日本円にして約5200億円にもおよぶという。
また、4月26日にリリースした新作『崩壊:スターレイル』の人気も飛ぶ鳥を落とす勢いだ。ターン制RPGで果てしない銀河を冒険するという同作は、事前登録者数だけで1000万人を超えるほどで、リリースから2日後には全世界で2000万ダウンロード突破という、驚異的なスタートを切っている。
ヒット作を続々とリリースするmiHoYoは、かつても『崩壊学園』『崩壊3rd』といった多くの人気ゲームを世に送り出してきた。その勢いはとどまるところを知らず、いまだにユーザーの心を掴み続けているといえよう。では、なぜmiHoYoはヒット作を連発できるのか。今回は中国研究家でジャーナリストである高口康太氏に、miHoYoについて解説してもらった。
miHoYoを擁する中国ゲーム市場は、世界最大規模に膨れ上がっていると高口氏は語る。
「中国はこの20年で凄まじい経済成長を遂げました。成長に応じて国民の消費も伸び、ゲーム市場も活発化しました。中国がユニークなのはゲームがスマホに集中したことです。日本や欧米ではゲーム専用機やパソコンでのプレイも一定のシェアを持ちますが、中国では経済成長を迎えたタイミングがスマホの普及と重なったため、スマホファーストとなりました。
今の世界のゲーム市場はスマホメインですし、結果として中国のゲーム会社が台頭するきっかけとなりました。実際に日本国内のゲーム市場を俯瞰してみると、中国製ゲームのシェアは約25%となっており、クオリティも高いです。現状は『伝説対決-Arena of Valor-』『PUBG mobile』のテンセント、『Identity?第五人格』『荒野行動』のネットイースという大手2社に売上が大きく集約しています」(高口氏)
一方、miHoYoの戦略はこの2社とは異なるという。
「テンセントとネットイースは、リソースを分散させ、幅広いゲームをリリースして売上を伸ばしています。この2社を筆頭に1作に予算をかけすぎない風潮が中国ゲーム市場では続いていたのですが、そこに待ったをかけるかたちで存在感を出し始めたのがmiHoYoでした。
miHoYoは日本のアニメ、ゲームなどのオタク文化の影響を色濃く受けた中国の若者3人が2011年に創業。当初はヒット作も出ず、鳴かず飛ばずでしたが、15年リリースの『崩壊学園』を機にじわじわと人気になっていきます。そして、16年に中国国内でリリースされ、17年には日本版もリリースされた『崩壊3rd』が全世界1億ダウンロードを記録し大ヒット。miHoYoはテンセントやネットイースとは異なり、基本的に作品数は多くなく、1作にできるだけリソースを注ぎ込む方式のため、かなりリスクの高い戦法を取っているんです。
ですがmiHoYoは、センスのみで判断しているのではなく、ゲームの開発段階に応じて外部ユーザーからの評価を積極的に取り入れたり、随時改善するといった姿勢を貫いていたりすることから、博打ではなく、しっかりと計算したうえで勝負を仕掛けているのです」(同)