日本政府は巨額助成金を投入…「日本の半導体産業が復活」が妄想だといえる根拠

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 となると、現在、多くの人々が「日本半導体産業の復活」と唱えていることの正体とは、ソニーとデンソーが資本参加するTSMC熊本工場、および「2027年までに2nmを量産する」と発表したラピダスにおけるロジック半導体ということになるだろう。

なぜ違和感があるのか?

 改めて図4を見ていただきたい。1980年代に日本が強かったのはDRAMである。その頃、日本は世界シェア50%超を独占したが、そのほとんどがDRAMによる売り上げだった。2000年を境に日本はDRAMから撤退し、ロジック半導体のSOCに舵を切った。そして、DRAMが強かった頃も、DRAMから撤退した2000年以降も、日本がロジック半導体で強みを発揮したことはなかった。また、TSMCと戦えるような世界的なファウンドリーも、日本にはほぼなかったといっていい。

 そのようななかで、12/16~22/28nmロジック半導体の受託生産を行うTSMC熊本工場や、2nmのロジック半導体を量産すると発表したラピダスが注目されているわけである。今の日本半導体産業の状況を正しく表現するならば、それは「復活」ではなく、「ロジック半導体への新たな挑戦」だろう。しかも、相当困難な挑戦である。ということから、筆者は、「日本半導体産業の復活」に大きな違和感を覚えるのである。

 以上の筆者の論説に対して、「屁理屈を言うなよ、日本半導体が活性化されているのは事実なんだからさ」と反論が飛んできそうである。これに対しては、拙著記事『28nmロジック半導体の逼迫が解消、TSMC熊本工場が無用の長物になる可能性』)、『ラピダスが2nm半導体を量産できない根本的理由…サッカー日本代表との致命的な違い』)をご参照ください。結論を一言でいえば、またしても失敗するであろう、的外れな頓珍漢なところに、無駄に税金を使うなということである。

(文=湯之上隆/微細加工研究所所長)