メガバンクのシステム子会社から外資系証券SEに転職で月収3倍の理由…同じ仕事内容

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「gettyimages」より

 2月にSNSに投稿された転職エピソードが一部で話題を呼んでいる。20代と思われる投稿主は、メガバンクのシステム子会社のSE(システムエンジニア)職から外資系証券会社のSE職に転職したところ、月収が約21万円から65万円へ約3倍も増加したというのだ。こうした事例はよくあるものなのか。人事コンサルティング会社・人材研究所の代表である曽和利光氏に解説してもらった。

メガバンクの経費節約戦略で生まれた子会社たち

 メガバンクのシステム子会社での業務とはどのようなものなのか。

「メガバンクのような規模の大きな銀行は、自社のシステム管理をするにあたって、その費用を抑えるために外注ではなく子会社をつくることが多いです。ATMの操作といった勘定系システムの開発、ネットバンキングの開発、情報流出が起こらないようにする監視や補修作業、システムにバグが起こらないようにする監視作業など、そういった業務が中心だったのではないでしょうか」(曽和氏)

 この投稿主によれば、外資系の証券会社に転職したことで、同じような業務内容にもかかわらず月収65万円という高給にありつけたというが、こうした転職事例はよくあるのだろうか。

「ゴールドマン・サックス証券や三菱UFJモルガン・スタンレー証券といった大手の外資系証券会社は、グローバルな規模でビジネスを展開し膨大な取引が行われているため、多数のエンジニアを必要としています。これらを考えると、投稿された月収の増加も十分にあり得るでしょうね。また国内企業と外資系企業の気質の違いも大きな要因のひとつでしょう。特に欧米の企業は『高いお金払うからそれに見合った働きをしてね』という意味合いを込めて高給を払う実力主義的な側面が強いです。ただ、その書き込みには『やっている作業は前職時とあまり変わらなかった』とあったので、この投稿主の方としては楽に高給を稼げた実感があったでしょう」(同)

 子会社とはいえメガバンク系列の企業と外資系証券との間で、なぜこれほど大きな給与の差が生じているのだろうか。

「元も子もない言い方になってしまいますが、これは会社の違いというほかないでしょうね。システム管理の子会社は、メガバンクがシステム管理費を節約したいという意図でつくった会社なので、いかにコストを抑えるかが存在意義になっているわけです。そのため、その子会社に長年勤務すれば給与も上がるのでしょうが、数年勤めただけの20代のエンジニアが高給を取れる環境ではなかったのでしょう」(同)

外資系入社で知っておくべきリスクやデメリット

 外資系証券会社の社員になることにはデメリットも存在するという。

「外資系企業は年俸制を導入している企業が多く、賞与や退職金制度がない可能性もあります。加えて、成果主義なので勤続年数が長くなれば自動的に給与が上がっていくことも少ないです。日系のメガバンクであれば出る住宅手当なども外資系では出ないこともあるでしょう。高い月給は、こうした事情込みというわけです。

 さらなるデメリットでいうと、メガバンクのシステム管理という安定した場で得たスキルは、ある意味で代替可能なスキルともいえるわけで、外資系証券会社で作業をより効率的にこなす他の人員が見つかった場合、簡単にクビを切られてしまう可能性も高い。実力主義的な側面が強いということは、期待された成果を上げられるかどうかが問われ、給与に見合う仕事ができなければすぐに解雇されることもあるため、プレッシャーやリスクが高い環境というわけです」(同)

 ほかにもSEという職業の宿命ともいえる問題で、雇用が不安定になることもある。