「今回の値上げはATM利用もさることながら、窓口利用がメインと考えられる。この数年、新型コロナが蔓延するなかで銀行店舗の来店客数が大幅に減少し、近年のネットバンキングシフトのトレンドも加わって窓口での振り込み依頼は相当に減ってきている。銀行からすると、そのなかで窓口対応を維持することは採算的に難しくなってきていた。もちろん、料金引き上げで、さらにネットバンキングの利用に顧客を誘導するという考えも銀行にはある」(浪川氏)
今後、他行もこの動きに追随する可能性はあるのか。
「今のところ、他の銀行に追随の声は上がっていないが、いずれ追随する銀行が出るに違いない。前述の事情やリテール分野が採算的に厳しいという収益事情はどこの銀行も同様だからだ。公取委の監視が厳しい時代に一斉引き上げはありえないという面も見落とせない」(同)
店舗やATMの維持費を削減するため、振り込み手数料の値上げ以外にも、銀行は今後、どのような施策を実施することが想定されるか。
「すでに両替手数料の値上げなどが行われており、むしろ振り込みやATMの手数料引き上げはそれらの後に行われている。したがって、この先に予想されるのは、店舗・ATMというネットワークの見直し、縮小だろう。三菱UFJの場合、店舗外ATMの夜間利用を取りやめる方針も打ち出している。次は店舗統廃合、自社ATM(なかでも店舗外ATM)の撤去などがテーマになるだろう。
そもそも、ATM、なかでも店舗外ATMは採算面の問題があった。土地、スペースの賃料、清掃・衛生管理等々まで含めると、投資対収益のバランスはとれていない。しかも、セブン銀行などコンビニATMネットワークは周密であり、銀行が自前で維持する必要性はなくなっている。もちろん、キャッシュレス化、電子マネーの普及も見逃せず、自前のATMネットワークの見直し・縮小は時間の問題とすらいえるだろう」(同)
(文=Business Journal編集部、協力=浪川攻/金融ジャーナリスト)