三菱UFJ銀行が他行あての振込手数料を改定し、店頭の場合は一律990円に引き上げることがわかり、驚きの声が広まっている。なぜ同行は「ほぼ1000円」への引き上げという批判覚悟にもみえる決断を下したのか。そこには、盤石な経営基盤を持つとみられるメガバンクですら直面している厳しい状況があるという。
三菱UFJ銀行の店頭での他行あての振込手数料は現在、振込金額3万円未満は594円、同3万円以上は770円であり、10月2日からは一律で990円とする。加えて、ATMでの他行あての振込手数料については、現金は374円(振込金額3万円未満)・550円(同3万円以上)を一律で880円に、カードは209円・330円を一律で275円にする。一方、ネットバンキングについては154円・220円のまま据え置き、スマホアプリの個人向け送金サービス「ことら」は無料(送金額10万円以下)のままとする。
他メガバンクの店頭での他行あて振込手数料をみてみると、みずほ銀行は710円・880円、三井住友銀行は605円・770円で、三菱UFJ銀行がもっとも高額となる。一方、ネットは振込金額3万円以上の場合はみずほ銀行は320円、三井住友銀行は330円なのに対し、三菱UFJ銀行は220円と最安。メガバンク3行のなかでは店頭とネットでもっとも差をつけることとなる。
コスト削減の観点から銀行各行は近年、店舗の統廃合と店舗人員の削減を進めてきたが、コロナ禍がその動きに拍車をかけることに。特にメガバンクのなかでもっとも店舗数が多いみずほ銀行は、HP上でも大々的に<「銀行に行かない」を当たり前に。>と掲げている。三菱UFJ銀行も例外ではなく、2023年度までに店舗数を17年度末比で約200店舗減らし、4割減とする計画を進めている。こうした背景のなかでの今回の三菱UFJ銀行の決断となったわけだが、「ほぼ1000円」のインパクトが強いだけに、SNS上では次のような声も多数あがっている。
<引き上げ額がエグい。私企業だから仕方ないと許容できるものなんだろうか>
<「店に来るなよ」という鉄の意志を感じる>
<三菱UFJ銀行からのメッセージ「銀行には来るな」以上。>
<窓口に来るな、ATMに並ぶなってことです>
<もはや使わないでというレベルですね>
<現金を扱うとこはできる限り減らしたいって事だろう>
<この動きは加速するし加速させるべきと思うよ。人の手を介すると余分なコストがかかることを理解していない客が多すぎる>
金融業界関係者はいう。
「『もう店舗やATMに来ないでネットでやってほしい』『現金を使わないでほしい』というのが銀行の本音であり、業界トップの三菱UFJ銀行ですら、それを前面に打ち出さざるを得ない状況になり始めたということ。特にメガバンクとしては預金残高トップの同行は、それだけ口座の維持に膨大なコストと手間がかかっている。990円という金額が独り歩きしてハレーションを呼んでいるが、銀行側の手間やコストを考えれば『990円でも安い』という印象。メガバンク各行は毎年、ネットバンキングや各種システムの整備に巨額の投資を余儀なくされており、客にネット利用への移行を促しつつ、並行して店舗やATMの維持費を削減していくことは死活問題。人員も店舗業務からシステム関連にシフトさせる必要があるが、再教育や優秀な人材の採用は一筋縄ではいかず、各行に共通の課題となっている」
今回の三菱UFJ銀行の動きの背景について、金融ジャーナリストの浪川攻氏はいう。