かっぱ寿司も高速レーンのみの業態ですが、そうなったのは2015年廃棄ロスの削減や出来立てをお客に届けたいと、回転レーンを廃止してからです。魚べいも昔は回転レーンを導入していましたが、12年ごろから回転レーンの廃止を推し進めて、13年からオープンしている店舗はすべて高速レーンオンリーにしているのです。だからこそ回らない寿司チェーンというイメージを獲得できたのでしょう」(同)
魚べいがメインに打ち出す高速レーンに比べて、旧来の回転レーンにはデメリットも大きかったという。
「回転レーンは実物の寿司が回っている様が華やかで食欲をそそるというメリットがありますが、お客が手をつけない寿司が増えると、乾燥してどうしても味や品質劣化してしまうというデメリットがありました。これは近年のタッチパネル式の注文が主流になったことも関係しています。回転レーンは頼みたいお寿司を探すメニュー表としての役割もありましたが、これらタッチパネルの登場でその役目が薄れてしまったのです」(同)
回転レーンは寿司テロを誘発しやすいというデメリットもあるため、スシローなど回転レーンが主軸の店舗は苦渋の決断を迫られているようだ。
「スシローは回転レーンには寿司ネタを書いたパネルだけを流すなど、迷惑行為への対策を講じざるを得なくなっています。私も先日、人気店といわれている、スシロー有楽町店とスシローBIGBOX高田馬場店に足を運びましたが、お昼時だというのに客足が少なかったですね」(同)
回転レーンをベースにしていたチェーン店も、かっぱ寿司のように今後は回転レーンを廃止せざるをえなくなっていくのだろうか。
「現在の対応策を見る限り、両社とも回転レーンを廃止するつもりはないのではと感じています。スシローはパネルだけを流す措置は一時的なものだと説明しています。一方、寿司ネタを保護する抗菌カバーを導入した回転レーンがウリのくら寿司は、現在も回転レーンでの提供を続けていますが、店内の見回りを強化しています。会計を効率化するために導入していた、お客が各座席で受け取った商品を自動で判別するAIカメラシステムを、防犯にも活用しています。ですからスシローもくら寿司も、回る寿司を今後も続けていく覚悟なのではないでしょうか」(同)
では、こうした迷惑行為への対応を経て、業界の勢力図が変化するようなことはあるのか。
「高速レーンのメリットで、魚べいやかっぱ寿司が多少売り上げを伸ばすことは考えられますが、勢力図が大きく変わるようなことはないと考えています。理由は店舗の立地で、ビジネス街など利便性のいい立地はすでにスシローやくら寿司が押さえており、優位性を保っているからです。今後空き店舗が出れば魚べいなどにもチャンスが見込めるかもしれませんが、可能性は高くないでしょう」(同)
(文=A4studio、協力=重盛高雄/フードアナリスト)