新型コロナウィルス感染症に伴う影響やロシアのウクライナ侵攻等により日本経済を取り巻く環境が引き続き厳しいなか、今年度における企業の設備投資計画も旺盛である。実際、先々月公表された1-3月期の法人企業景気予測調査(財務省・内閣府)の23年度設備投資計画を見ると、GDP設備投資の概念に最も近い「ソフトウェアを含む設備投資額(除く土地投資額)」が全産業合計で前年度比+9.1%となっており、22年度計画の同+8.6%に引き続き高い伸びを記録している。
?また、本日公表された3月短観の設備投資計画(日銀)を見ると、「ソフトウェアを含む設備投資額(除く土地投資額)」が全規模合計で22年度が前年比+11.0%に下方修正された一方で、23年度が同+4.4%となっており、22年度の当初計画(同+3.4%)を上回る伸びとなっている。
成長会計に基づけば、これまでは有形・無形の固定資産の蓄積が停滞することで、資本投入量や全要素生産性の低迷を通じて潜在成長率の低迷につながってきた。このため、逆説的に考えれば、経済全体や企業それぞれの成長期待が高まることによって設備投資が拡大すれば、需要拡大を通じた生産性向上により賃金も上がり、経済成長の好循環につなげることによって経済の長期停滞から抜け出すことができる可能性がある。
計画が大幅に増加している背景として、令和4年度補正予算における国内投資誘導関係の主な事業の押し上げが指摘できる。実際、円安を活かした地域の「稼ぐ力」の回復強化として、円安を生かした経済構造の強靭化向けに約1.1兆円の予算が組まれている。内訳としては、先端半導体生産基盤整備基盤として4500億円、農林水産業の輸出拡大として440億円、サプライチェーン対策として従来半導体に3686億円、工作機械・産業用ロボットに416億円、航空機部素材に417億円、等である。
また、新しい資本主義の加速として、成長分野における大胆な投資の促進向けに約3.1兆円の予算が組まれている。内訳としては、科学技術・イノベーションとして先端国際共同研究推進事業に501億円、バイオモノづくり革命推進事業に3000億円、宇宙に639億円、地域中核・特色ある研究大学強化促進事業に2000億円、経済安全保障重要技術育成プログラムに2500億円、等である。さらにGXではグリーンイノベーション基金に3000億円、グリーン社会に不可欠な蓄電池の製造の製造サプライチェーン強靭化支援事業に3316億円、等、DXではポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業に4850億円、革新的情報通信技術基金事業に662億円、デジタル田園都市国家構想交付金として800億円、等である。
それ以外にも、省エネ・再エネの推進に約0.4兆円、中小企業等には事業再構築促進と生産性革命推進の事業に約0.8兆円、インバウンド観光の復活、観光地・観光産業の再生・高付加価値化等へ約0.2兆円計上されていることから、設備投資・研究開発投資向けに計5.6兆円の予算が計上されている。
そこで、これまでの3月短観の設備投資計画と同年度のGDPにおける名目設備投資額の関係を基に、今年度のGDPにおける名目設備投資の金額を予測してみた。すると、21年度実績の90.1兆円から22年度は96.0兆円、23年度は101.8兆円にまで拡大する計算となる。これが実現すれば、実に1991年度の102.7兆円以来の水準まで日本の設備投資が拡大することになり、今年度の経済成長率の大きなけん引役になることが期待される。