果たして、JR北海道は再生できるのだろうか。JR北は4月3日、令和5年度(2023年度)の事業計画を発表した。JR北にとって23年度は、18年に国土交通省が発出した「事業の適切かつ健全な運営に関する監督命令」を受けて19年4月に策定した「JR北海道グループ中期経営計画2023」の最終年度となる。23年3月31日には根室線(富良野―新得間)の廃止に関し、国土交通大臣あてに鉄道事業廃止届出書を提出したばかり。また同年4月1日には留萌線の一部区間が廃止された。
本稿ではJR北が発表した計画に触れ、JR北がこれからどのような姿勢で鉄道と向き合っていくのかについて読み解いていく。
その前に、前述の国交省の監督命令について振り返っておこう。JR北海道は16年に「単独では維持することが困難な線区」を公表。道内では赤字の路線が多くあり、経営改善に向けた取り組みを進めてきた経緯がある。国土交通省によれば、「JR北海道は、国鉄改革の趣旨に則り、徹底した経営努力によって収支を改善して、経営自立を図る必要がある」とし、「将来にわたって持続可能な交通体系を構築するとともに、他の輸送機関とも適切に役割を分担して、必要な輸送力の確保に努め、地域において求められる輸送サービスの提供を的確に行っていく必要がある」としている。そしてJR会社法に基づき、JR北に対して経営改善に向けた取組を実施するよう命じた。
国交省側が求めたのは(1)JR北の経営改善に向けた取り組み、(2)関係者による支援・協力、の2点だった。このうち(1)では31年度に「JR北海道が経営自立することを目指す」と記載されている。背景には北海道新幹線の札幌延伸開業があり、この頃には「札幌延伸の効果が発現する」としている。そして、札幌圏内での非鉄道部門も含めた収益の最大化や新千歳空港アクセスの競争力のさらなる強化、北海道新幹線の札幌延伸に向けた対応、JR北グループ全体を挙げてのコスト削減や意識改革等を求めた。なお、(2)では維持管理の支援等を列挙。北海道新幹線札幌延伸開業を前提として、「東京と札幌を結ぶ新幹線の最大限の高速化を実現するための方策について、北海道と本州の間の物流の確保にも十分配慮した上で、必要な検討を進める」とした。
監督命令について確認したところで、JR北が発表した23年度事業計画を見ていこう。事業計画は(1)事業運営の基本方針、(2)鉄道輸送に関する計画、(3)鉄道施設の整備に関する計画からなる。(2)では輸送量の見通しを輸送人員1億1700万人と見通している。また(3)では北海道新幹線車両基地の設備増強に向けた設計のほか、車両の新製、高架橋等の耐震化等を計画しているとした。
そして(1)では22年度の取り組みを振り返ったうえで、23年度事業運営方針を提示した。安全輸送の確保について、「『お客様の命』『社員の命』を守るためにとるべき行動として『安全第一、安定第二』『危ないと思ったらすぐに列車を止める』『現地の判断が最優先』など『JR北海道安全の再生』に基づく行動を引き続き実践する」という。特に「危ないと思ったらすぐに列車を止める」との部分に関しては、大雪で大規模運休を余儀なくされたことなどが念頭にあるのだろう。一部からは当時、「列車を動かす気があるのか」「『冬こそJR』のスローガンはどこへ行った」などと厳しい意見が寄せられていたが、今年度も「列車をすぐ止める」との方針を継続していくに違いない。