経営難にあえぐJR北にとって、「どの部門で収益を確保すべきか」という疑問はついてまわる。そこで注目したいのは、JR各社が取り組んでいる不動産事業だ。他社の事例を見ていくと、JR東日本の22年3月期連結決算の営業利益は1539億円の赤字となり、赤字幅は前年より3664億円縮小している。内訳は運輸が2853億円の赤字(同2631億円の赤字縮小)、不動産・ホテルが1078億円(同約926億円の増)となっている。この年の不動産・ホテル事業の営業利益の増加額は運輸に次いで2位で、陰ながらJR東の経営を支えている。JR東は、19年に開業した「渋谷スクランブルスクエア」やその翌年開業した「JR横浜タワー」のほか、24~25年度竣工予定の「高輪ゲートウェイシティ(仮称)」など、数々の不動産事業も手がけており、JR北にとっては参考にできる事例だ。
ちなみに22年4月、JR北も社宅用地を活用した開発計画と、賃貸マンションの新規ブランド展開を発表。また25年春には、札幌市手稲区に住居と商業施設を合わせた複合施設が開業する予定だ。なお、23年度事業計画の中でも不動産事業について触れているため、不動産開発を継続していく姿勢がみてとれる。JR北にとっては何が何でも収益は確保したいところ。収益源をできるだけ多く見つけておくことは重要だ。
JR北に関する今後の焦点は、赤字路線の合理化がいかに進むかだろう。今年3月8日にJR北が公表した「2022年度第3四半期[4~12月]線区別の収支とご利用状況」によると、100円を稼ぐためにどれくらいの費用がかかっているかを表す「営業係数」は、24年3月末での廃止が事実上決まった根室線の富良野―新得間が1968円(管理費除く、以下同)と赤字。次いで同じく根室線の滝川―富良野間も1175円となっている。言い方は少し悪いが、JR北は「次のターゲット」を根室線の滝川―富良野間に絞っているのかもしれない。
前述の「収支・利用状況」から見れば、滝川―富良野間をバス転換した場合、営業係数はすべて黒字となる可能性はあるものの、利用状況次第では議論が違う方向に向かう可能性もある。鉄路を意地でも残したいと考えている自治体側と、経営合理化のため積極的な廃線を進めるJR北。両者の闘いは今年も熱を帯びそうだ。
(文=小林英介)