書籍『ゲームの歴史』に当事者たちから事実誤認との指摘続出で物議…ゲーム業界に悪影響

「ゲーメストEX」元編集長・岩井浩之氏のTwitterより

<書籍『ゲームの歴史』はひどい本>

<(編注:「ポケットモンスター」の開発に携わったゲームクリエイターの田尻智氏の証言を)全無視して持論を、あたかも真実のように書いた著者のことが本当に許せなくて>

自称偏愛レトロゲーマー・loderun氏のブログより

<例えば本書は、黎明期の業務用ビデオゲームである『ポン』を開発したアラン・アルコーンを「電子技師(プログラマー)」と言い表している。しかし同作品の基板はTTL(Transistor-transistor logic)で構成されており、プログラムを実行するマイクロプロセッサ方式ではない。即ち、TTL回路の設計者を「プログラマー」と呼ぶのは、カッコ書きの表現とはいえ明らかに不適切だ>

<例えば1977年に発売された家庭用ゲーム機のアタリVCSに関する記述を見ると、アクティビジョンを設立した開発者の動機としてアタリがインセンティブ報酬を認めなかった点を挙げず、移植版『パックマン』がVCSを救った(むしろアタリ社凋落の原因の一つ)、『E.T.』のゲーム化企画を推進したのはアタリ社経営陣(正しくは親会社のワーナー)などと、前書きで因果関係を学ぶことの意義を述べておきながらあまりにお粗末だ>

ゲーム開発プログラマーでゲーム関連の編集者・ライターの岩崎啓眞氏のTwitterより

<任天堂のロイヤリティ商売の始まりの部分は全て間違いといって構わない。そもそも任天堂がサードパーティを想定していなかったことをわかっていない。正直、社長が訊くとか、上村先生の本を読めばわかることなのに…>

<まずApple IIが許諾制が間違っているし、そもそもファミコンはサードパーティを想定していなかったので、まるで間違いなんです。あと山内社長が「言った」とされる言葉のソースが全くわからない。すくなくとも参考資料の中にないのは賭けてもいい。ソースを知りたい>

<…あの、すみません…N64で3D酔いが登場したとか書いてあって、本当にどうしたらいいかわからなくなってきました。この人、ディセントとかジャンピングフラッシュとか、キングスフィールドとか、全然知らないとしか思えない。ナムコでもエースコンバットが出てこない>

<何度読んでも理解不能なんだけど、普通の3D用語に翻訳すると「ナムコはPS1ではテクスチャを貼ったビルボード(これを2Dというらしい)を背景に多用した。これは疑似3Dで、PS1にはちょうど良かったが、セガは本当に3Dをやろうとしたので見た目が貧相だった」という超謎理論ということになる>

<ガチャを貶しているのは別にいいけど、課金のロジックとか過去の遺物で困る。ガラケー時代のガチャのロジックをスマホ時代に語られても困るんだが…あと、この人、バトルパス系の課金技術とか全く知らないっぽい>

<ごめん、僕も本当に腹立ったわ。「ロード時間を短くしようとしていたのが任天堂ただ一社だった?」デタラメ書くのが歴史ですか?>

ゲーム業界にも悪影響

『ゲームの歴史』の問題点について、前出の岩崎啓眞氏はいう。

「第1巻のアタリショックに関する記述部分で、ナムコのアーケードゲーム『パックマン』を米国のアタリがVCSに移植して1982年に発売したのは事実ですが、本書ではパックマンがアタリを救ったと書かれていますが、実際にはその逆でアタリ凋落の原因となったことは有名な話であり、パックマン発売当時、すでにVCSはコンピュータゲーム市場で高いシェアを誇っていました。ほかにも、任天堂がファミコン発売当初にソフトを開発するサードパーティに関してロイヤリティ制にしていたと書かれていますが、最初はソフトは任天堂の自社開発のみでサードパーティに開発させることを想定していませんでした。のちにサードパーティにもソフト開発と販売をなし崩しで開放しましたが、カセットの製造は任天堂自身が開発メーカーから委託を受けるOEM契約の形をとっていたので、一部の初期に参入したメーカーを除いてロイヤリティ制はとっていませんでした(その一部も契約更新時にOEM契約になっています)。